第7話 星の死


星が、あんなにも簡単に死ぬ。

壮大で、想像もつかない終わりが、呆気なく。

彼女は、いったい?


「何者何だ……リリス、お前は?」


目の前の少女は、どこか哀しげな目をしていた。

地面に突き刺さった彼女の武器は、深く、地面に突き刺さっている。


、だよ。キミが想像しているであろう、ね」

「神……」


なぜか、俺は彼女の言葉を疑えなかった。

現に起きた現実。死をも超越したナニカ。

ありえないキセキを引き起こす、人智を超えた者。

それを、神と呼ばず何と呼ぶ?


「疑いは、しないんだね」

「ああ。そりゃあな」


逆だ。

今までを考えろ。

神の方が納得できる。


これが神でなければ、なんだ?


「神と言っても、色々と役割があるだろう? 破壊とか、再生とか、自然とか、風とか。

確か……シャードだっけ?」

「そうだね。シャードは風神。名の通り、風の神だ」


焚き火の火が音を立てて、熱を放出する。

少し寒いこの世界での、唯一の暖房だ。


「だったら、お前は?」

「私は──」


その瞬間、


バリン!


空が、音を立てた。

ガラスが割れるような音だ。だが、ここにはそんな物ない。だとすると……


「ハハハハハハ!!」


響いた笑い声と共に、何かが急降下した。

ズドン! 

轟音と砂埃が覚めぬうちに、リリスは俺の手を引っ張る。


「隠れてて!」

「な──!」


投げ飛ばされた。

理解が追いつかない。

反応から声を出すまで、1秒も掛かっていない。その刹那に、


「ハハハハハハ!! 遂に来たぞ! リリス」

「──ハルステッド!」


ハルステッドと呼ばれた男と、リリスが撃ち合っていた。

彼女の方は、巨大な大鎌を高速で振り払っている。

対する男……ハルステッドは、十字架の形をした剣で応戦していた。


「随分と探し回ったぞ。我が『アルカナ』を破壊した因縁、ここで断ち切ろう!」


古代エジプト、ファラオのような格好の男だ。

水色の瞳に、茶髪。焼けこげた肌の上裸。

十字架の中心には、穴が開いていた。

そこを持ち、4方向から刃を向ける。

常人では無い速度の連戦。

人間、どころではない。あの速度についていける生物は存在しない。


「なるほど、流石は『』。我が星を破壊した力は、まだ健在のようだ」

「位が違うだろう、狂神きょうしん。私を殺したくば、『戦神』か『時空神』でも連れてくることだ」


狂神、ハルステッドは距離を取る。

鎌をブン! と振り払うリリス。


「ちッ」


僅かな時間。それでも、差は感じれた。

ハルステッドの全力を、リリスはいなし続けている。防戦一方に見える戦い。でも実際は……


「このまま続けてもいいよ。その代わり、絶対に殺す」


感じ取った殺気。

禍々しいなんてレベルではない。

死刑執行中の時よりずっと。ずっと。ずっと。

自分に向けられた物では無いのに、全身が動かなくなった。


「……クソ」


ハルステッドは後ろを振り向き、十字架の剣で空を切り裂いた。

灰色の空が裂け、満天の夜空が現れる。


「じゃぁね、ハルステッド」


彼は無言で、時空の中に帰っていった。

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