勝手な再会

 ここで暮らし始めて数週間が経過した。

 はじめこそ他の子供達との関係や生活になれず戸惑いこそしたが、ここで暮らすうちに慣れた。

 当面の食料と人間的な生活の保証がなされているこの場所に、定住したいと願うのはおかしいのだろうか。

 しかし目的を忘れるまでには至っていない。

 ここで暮らす間にも、せめて周辺の探索や聞き込みで情報を得るぐらいはしなければここまで来た意味がなくなってしまう。

 そうして情報を再び集め始めてから、意外にもすぐに情報を得ることができた。

 いわく、この近場で見つけた死体、そこに転がっていた銃器がやけにきれいに切断されていたらしい。

 銃器という鉄の塊をきれいに切断する。それも所持していたであろう人間を殺して。

 所持している人間を殺すだけならばできる人間もいるだろうが、この崩壊した世界で銃器をきれいに切断するという行為ができるのは片手で数えられる人数ではなかろうか。

 また、”ナノマシンの操作”という現象の中に鋭利な刃物のような形状にしたうえで何かを切断するというものが含まれるのであれば、可能なのであれば、その銃器を切断したのはあの少女かもしれない。

 そうして周囲の探索を重点的に行なっていたある日、周囲の大人が食料が知らぬ間に減っているということを口にしていたため、食料庫として使われている倉庫に向かった時だった。

 中から一人、逃げるように出てきた誰かに見られぬように倉庫に入る。 

 中は暗く、入口から差し込む光だけが照明となっていた。

 周囲を見回し、誰もいないことに疑念を感じながら奥へと進んだその時だった。

 銀色の何かが数瞬前まで自分の首があった場所を通り過ぎたのは。

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銀色の少女 @natakaya

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