第24話 返事

ザカリー王子の後をついて部屋を出てから、一度振り返ると、エルランド王子が腕を組んで扉にもたれかかり、ムッとした顔でこちらを見ていた。



「エルランドに挨拶しようと思って行ったら、セシリアがいるから驚いたよ。ごめんね、邪魔して。でもちゃんと連れて帰らないとミラベルに怒られてしまうから」


ザカリー王子はそう言いながら、わたしの前を歩いていた。


「『何とかセシリアを連れて国に遊びに来い』って言うから、何かあるんだろうとは思ってたけど。『昨夜恋人と一緒にいたら賊に襲われた』って、エルランドが公にしたから、ようやくわかったよ」


え?


「いつの間にそんな仲になったの? エルランドは教えてくれないし」


ちょっと待って……

「恋人」って……


あ……


コンラッドのあの意味深な態度……


「公にした」って……


わたしがずっと黙っているからか、ザカリー王子が言った。


「ああ、ごめん、君の口からは言えないか」


その時


「セシリア」


そう名前を呼ばれて振り向くと、エルランド王子がこちらに向かってやって来ていた。

そして、わたしのところまで来ると、いきなりキスをした。


「ザカリー、お前今の見ただろ? 証人だからな。誰かがセシリアに言い寄ったりしたら、隣国の王子が黙っていないって、おふれでも出しとけ」


なんでそんな無茶を……


エルランド王子の言い分に、ザカリー王子はあきれながら言った。


「そんなの無理に決まってるじゃん」


ザカリー王子の言うことを無視して、エルランド王子は、今度はわたしに向かって言った。


「こちらのごたごたを解決したら、すぐに会いに行く。もうまわりにはセシリアが恋人だと言って回った! あとは結婚の返事を聞くだけだから」



唖然としてしまった。

なんて勝手なんだろう。


だってもうエルランド王子が全部決めてしまってる。


それでも、この人のことを憎めない自分がいる。



わたしの返事は、もう決まっていたけれど、


「かしこまりました。お待ちしております」


そう言ってお辞儀だけした。






END

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イングリッシュローズの前で嘘をついた 野宮麻永 @ruchicape

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