第14話 散歩

朝早く目が覚めると、ここがオルグレン王国だということにわくわくした。


朝の空気を吸いに、散歩に出ると、庭師がバラの手入れをしていた。


「おはようございます」


声をかけると、年配のその庭師は、にっこりと微笑んでくれた。


「エルランド様のお客人だね。おはよう。寄せ植えは気に入ったかね?」

「とても素敵でした。ありがとうございます」

「お礼ならエルランド様にだよ」


お花をくださったのはエルランド王子だったんだ。


「この時間、その辺を歩いてらっしゃるはずだから探すといい」

「エルランド様がですか?」

「毎日わしらに声をかけてくださる」


人の良さそうなエルランド王子らしいと思った。


「あの、サイラスも一緒でしょうか?」

「サイラスは、どうだろう? 朝は別の仕事をしているんじゃないかな」


庭師にお別れを言って、エルランド王子がいないかと辺りを見渡しながら歩いていると、噴水のあるところまで来たところで、エルランド王子とサイラスが2人そろっているのを見つけることができた。


お邪魔でなければいいんだけど……

そう思いながら側まで行くと、サイラスの方がわたしに気が付いて、エルランド王子を肘でこづいた。


「おはようセシリア」

「おはようございます、エルランド様。お花をありがとうございます」


わたしがお辞儀をすると、


「花。うん、花ね」


とエルランド王子が言葉に詰まった様子を見せた。

もしかして……内緒だったのだろうか?


「セシリア、城下町に連れてってあげようか?」


サイラスが言った。


「嬉しいですけれど、お仕事があるのでは?」

「いいよな?」


サイラスが失礼な物言いでエルランド王子に聞いたのに、


「いいけど、バレないようにしてよ。」


エルランド王子は優しく答えた。

本当にお優しい方。

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