第11話 自由
ミラベルの言った通り、ザカリー王子から正式にドナフィー公爵家にわたしのことで通達があり、準備に追われた。
それからの数日は目まぐるしいほどの忙しさだったけれど、それでも初めて他国を訪れることへの期待の方が大きくまさっていた。
朝早くにレオドル王国を後にし、オルグレン王国に着いたのは昼過ぎくらいだった。
城につくと、1人の侍女が近づいてきた。
「セシリア様はこちらへ」
ザカリー王子とは別のところに案内しようとされる。
「あの、わたしはザカリー様にお仕えするお仕事があるのですが?」
「セシリア様は、エルランド様がご招待されたお客様だと伺っております。ザカリー様もご存知です」
本当に、招待してくださってたんだ。
わたしが案内されたのは、王宮の近くにある小さめの別館で、小さいながらも全てが揃っていた。
「エルランド様より、セシリア様には、自由に過ごされるように、と伝言を承っています。それから、こちらの別館にも、いろいろご用意いたしましたが、足らないものがありましたら、何なりとお申し付けください。あの……」
「はい?」
「エルランド様は、私に、ご案内だけしたら下がるよに申しつけられましたが、本当によろしいのでしょうか? 全てセシリア様がされなければいけなくなりますが?」
「気にしないでください。この方がわたしには落ち着けますから」
「そうですか。セシリア様がよろしければ、わたしは下がらせていただきます」
そう言うと、侍女は去って行った。
正直、この自由が信じられないくらい嬉しかった。
身の回りのことを自分でするすることなんて何でもない。
堅苦しいところで気を遣わなくて済むことがありがたかった。
どこまでエルランド王子はお見通しなんだろう。
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