第2話 中庭へ

お城に足を踏み入れると、広間は驚くばかりの人で、ミラベルの言った通り、これなら誰が誰だかわからない。


年頃の女の子たちが集まっている中心には、この国の第二王子ザカリー様の姿があった。


エルランド王子はどこにいるんだろう?




「お静かに! レオドル国王よりお言葉があります」


そこにいる皆が静まり返る中、国王が言葉を発した。


「先に知らせた通り、今回の舞踏会は、オルグレン王国第一王子エルランド殿の妃探しのために開かれた。しかし、エルランド殿のたっての願いで、改めての紹介は控えさせてもらう。どうか楽しまれよ」


それを聞いて、ミラベルがわたしに小さな声で言った。


「どの方がエルランド様かわからないなんて謎解きみたいで面白いわね」


そうなのかな……


広間には、服装から見てオルグレン王国から来たんだろうと思われる男性も多く舞踏会に参加していた。

エルランド王子目当てに着飾ってきた女の子たちにとっては、ここにいる誰がエルランド王子かわからないという趣向なんて、悪趣味でしかない、と思ってしまう。





いくばくも立たないうちに、ミラベルはどこかの貴族にダンスに誘われた。

手を引かれていくのを見て、わたしは、そっと中庭へと抜け出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る