おそらく僕が万次郎と出会ったのは中学の頃だったと思う。
日本史の教科書に、数行程度の説明と名前が太字で強調されていた彼を見たのが、初めてだった。
名前を書けば、テストで三点くらいにはなったと思う。
本来ならそれだけの関係性だったはずだ。
だけれども、何故か僕の頭に居座り続けている。千々和ミゲルや中浦ジュリアンの隣で。
教科書に書かれているのだから凄い人なのは間違いないのだけれど、具体的に何がすごいのか分からなかった。
しかし、この物語を読むと、彼がとてつもない人生を歩んでいることが分かる。
ジョン万次郎は十四歳のときに漁へ出て、そのまま遭難してアメリカに渡っている。
九歳のときに父を亡くし、病弱な兄と母の代わりに残された兄妹を養うために働いている少年がである。もちろん、彼は仕事が忙しくて読み書きもろくにできなかったとされる。
本作で出てくる「ぱしひこ」というワードだが、一見柔らかいので作者がユーモアで読みやすくするための仕掛けかな? と思ってしまうが、最後まで読めば、おそらくこの程度の英語力でアメリカに渡り、日本に帰ってきて日本史に残るような大仕事をやってのけたのだろうという覚悟と説得力になっている。
是非、皆様も学生時代の記憶の続きを、この物語と一緒になぞり直してみてはいかがだろうか。
面白いので、おすすめです。