第179話 学園祭 その2⑤

 ——— 衣装の手配が出来ず、平謝りのギャル子達。

 翠が衣装を手配した事を告げると、


「は? 意味分かんない。何であいつにツテあるんだよ」


 私は翠の力を説明する。


「だって、カースト一位の翠だもん。

 あの子、衣装系の業界ファッション界、ツテって言うよりコネクションかな? 本気になれば、日本牛耳っちゃう力あるからね」

「全然、意味分かんないんだけど」

「明日、全部わかるよ。それより、その布掛かってるの衣装ラックだから捲ってみて」


 彼女らは布を捲ると、ラックに掛かっている服を一着ずつ手に取り、かざすようにして品定めしていた。


「何これ、メッチャ可愛いじゃん」

「こっちは……カッコいい」

「何であのメガネが、こんなの揃えられるんだよ」

「だから言ってるでしょ? 彼女が、学校のカースト一位なんだって」

「だーかーらー、来羅それきらーい」

「あ、翠、衣装有難う」


 翠と滝沢さんが準備室に入って来た。最近、この二人一緒にいる時間が長い気がする。そう言えば、妹の話もしたって言ってたっけ。


「蘭華ちゃんにもお礼言っといて。一緒に手配してくれたの」


 蘭華ちゃん……名前呼びか。

 翠は自分の素顔を見せた子しか、名前で呼ばない。って、今まで私と芹葉しかいないんだよね。彼女で三人目だ。

 翠に新しく友達が出来たんだ。おめでとう。


「翠が名前で呼ぶから私も名前で呼んじゃうけど、蘭華ちゃん、翠に付き合ってくれて有難う」

「いいよ、お礼なんて。私はお陰で凄い世界、体験したし」


 彼女も店のパネルを見たようだ。

 そう話す滝沢さんは、目がキラキラして、別世界を見て来たような顔をしている。


「ようこそ桜木一派へ」

「ちょっと何それ」


 翠はちょっと怒ってる。


「三崎さん達も翠にお礼言っときな。私だってあなた達から、全然音沙汰無くて困ってたんだ」

「チッ! 桜木いい気になってんじゃ無いよ!」


 そう言うと、皆、教室を出てったが、四人程この場に残って三崎達が教室を出るのを見送った。

 そして一人が教室を出る間際「ゴメン」のハンドサインをしてすまなそうに出て行った。


「あれ? アンタ達は行かないの?」

「私達は彼女らとは別のグループ。あの子らと仲良く出来るかと思ったけど、やっぱ無理だわ。今回の件、ちょっと行動がダサい」

「ふーん……仲良いかと思ってた」

「冗談! こんなのモブ一人に自分の器の小ささ見せてるだけじゃん。そんな感じかな?」

「ハハ、確かに」

「趣味は合うけど人が合わないって奴だね」

「なる程」

「それに江藤さんと深川さんの自信もちょっと気になってね」

「ふふふ、ミスコンエントリーしたの?」

「ハハッ、茶番に付き合う気はないよ」


 ——— さっき、ゴメンして来た子もミスコンキャンセルさせなきゃな。


 

 ※  ※  ※



 ——— 配膳係の担当が準備室に入って来た。

 男女合わせて十四人だ。

 当然、私と芹葉と翠、そして真壁君に柳生君も入ってる。

 当然、三崎一派は来ていない。

 この分だと、明日もボイコットかな?

 まあ、二日目、ボイコット……って言うか、恥ずかしくて来れなくなるだろうから、元から頭数入れていないけどね。

 なので、今の男女比率は、一対一になっている。

 女子は残ったギャル子四人と私ら三人だ。


 さて、皆で衣装合わせだ。服は十分にある。

 みんな、サイズ、デザイン、それぞれに合わせ始めた。

 服のバリエーションが多い女子がこの部屋で着替え、男子は別室で着替えている。


「これ可愛い」

「いいねこれ。なんか自分じゃ無いみたい」

「あー、これサイズもう無いの?」

「ウエストが……ショック!」


 女性用はトップスはデザインが若干違う物が三種類あって、ボトムスはパンツと、スカート。スカートはタイト系とロリポップ系の二種類だ。

 男子は一律同じだが、首周りが、バンダナかネクタイかの違いがある。

 エプロンもそれぞれに合わせた仕様になっている。

 男女共通でパンツルックには男子はギャルソンエプロン。女子にはギャルソンのショートもある。

 タイトスカートは、エプロン付き。

 ロリポップなスカートはメイド調にフリフリな感じだ。

 

「これ、桜木が準備したんだ。凄いね」

「私はただ手続きして来ただけだから」

「いや、それでもさ。私はツテどころか何処に話を持ってけばいいのかも知らないしね。後で教えて」

「うん、私でよければ」


 ギャル子の一人が翠を褒める。ちょっと意外だ。

 皆、衣装も決まり、明日の配膳の練習をしていたら、暫くして、一人準備室に入って来た。

 三崎一派で最後に謝った子だ。


「あの……さっきは御免なさい。……いえ、今まで御免なさい」


 彼女は翠と私に皆の前で頭を下げた。


「いいよ。気にして無いよ。どうせ彼女らに無理やり付き合わされてる感じなんでしょ?」

「えぇ……まぁ……」

「いるんだよね、自分の思い通り事が運ばないと気が済まない子」


 翠はニコニコ笑顔を振り撒き、気にして無いアピールをする。

 私も彼女の善意な行動を受け、明日の事を忠告した。


「明日のミスコン、エントリーしたよね?」

「え? ……うん……」

「だったらキャンセルして」

「え? 何で?」

「三崎達から逃げられないようなら、明日学校休んででもミスコンには出ないで」

「それって……桜木さんに勝たせたいから?」

「んーん、貴女が痛い目見るから。学校来れなくなる程痛い目見るから」


 教室中に居る子達が「?」って顔をしている。

 この反応、当然だよね。

 男子が話しに割って入った。


「学校来れなくなるほどの痛い目って尋常じゃないな? 暴力的な何かか?」

「暴力の方が可愛いかもね」

「暴力の方が可愛いって、どういうことだよ」

「ちょっとあんたは黙ってて」


 私は男子の話を制止した。


「今回エントリーして来たのは、翠と貴女達六人……全部で七人って言ってた。貴女達の学校でのポジション、一応、学校で一番のオシャレさんなんだっけ? どうやら、貴女達がエントリーしたって、学校中に知れ渡ったのと、他の子はエントリーしても、勝ち目が無いって思ったようね。あと、翠との勝負の噂も原因みたいなんだけど」


 私は彼女の目を見続けた。

 彼女は少し困惑した顔をしながらも私の目を見ている。


「はっきり言って、明日のミスコンは、翠の独壇場になっちゃうから」


 彼女は私の言葉に翠を見て首を傾げた。

 私は翠を見ると翠はニコニコした顔で私の顔を見ている。全て話しても問題無いって顔だ。

 一応翠に確認する。


「いいね?」

「うん」

「真壁君、ゴメン、髪上げてくれる?」

「俺? いいけど」


 真壁君が髪を上げると皆惚け見惚れる。いつもの反応だ。


「彼と付き合うってなった時、皆、最初は多分凄く喜ぶと思うんだけど……どう?」

「うん、こんな綺麗な顔の男の子彼氏だったら……ダメだね。三日で隣に立てなくなる」

「そう。彼って女の子より綺麗な顔してんだよ」

「じゃあ、真壁君と付き合ってる桜木さんって……」

「幻のカップル」

「え?」

「真壁君と一緒に写ってる謎の美少女が桜木翠なの」

「ハァ? 髪、全然違うじゃん」


 翠はペロっと前髪を捲った。


「かわい……あん? なんで? え?」


 チラッと見えた翠の目と髪を見て、皆、動揺する。

 そして私は翠が入学してからの事をこの場にいる人に説明した。


「——— まずは分かったよ。ミスコン終わるまでこの場にいる人だけの秘密な」

「オッケー」

「うん……ちょっとミスコン怖くなって来た」

「皆、宜しく!」

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