第17話 憎き相手との対面
広いお屋敷の中にいる二人の男と隼人様、貴仁様、諏訪媛様と私、少し離れた周りには警護の者、お付きの者達が固唾をのんで見守っていた。
「そなた達は兄妹か?」
「…」
「だったらなんだ!」
「つらい目にあったのは姉上か?」
優しく語りかける貴仁様の声が屋敷に響く。
「…つらい目だと?人を人とも思わぬ所業をしておいて、つらい目などと容易く言われたくはない」
貴仁様の問いに怒りをにじませながらも答えると二人は何か思い出したのか涙ぐんでいる。
「ひどいことをしたのは…父か?…それともお祖母様か?」
今度は二人の間にいる隼人様が静かに聞く。
「お祖母様…お前にとってはそうだな…だがあの女は……姉上を追い詰めるだけ追い詰めて、用がなくなったら捨てたんだ」
「でていけと言われた姉上がどれだけ悲しんだか…お前たちにはわからないだろう!」
大事な人のために命をかけてまでここに乗り込んできた二人が肩を震わせて訴える。何が起きたのか想像もつかないけれど、必死さが伝わるだけに胸が痛い。
「隼人様!」
警護の者が声をあげると外が騒がしくなり、屋敷内に蒼苑様とお付きの者を連れた敦子様が現れた。
「遅くなったな」
「父上」
「これはどういうこと?蒼苑、隼人の妃候補を見に来たのではないの?」
「遅くなってすまなかった。貴仁様申し訳ないことを…」
敦子様の言葉を無視したように蒼苑様は貴仁様に声をかける。
「蒼苑なにゆえそなたが謝るのです。何が起こっているのかどういうことか誰か説明なさい。人がいないのはなにゆえです」
敦子様があたりを見渡して、隼人様に刃を向ける二人に気付くと今度は怒りで大声をあげる。
「なんてことをしてるの!早く隼人から離れなさい!誰かその者達を急ぎ捕らえなさい!」
苛立ちをあらわにする敦子様の命令に皆が戸惑った。そんなことをすればどうなるか、ここにいる者をはじめ、何も知らない者でも簡単に想像できるというのに。
「母上落ち着いてください。皆動かないように、私は話を聞くためにここにきたのだから」
蒼苑様はそう言うとお付きの者達に敦子様を下げさせた。そして一歩前に踏み出て二人の前に立った。
「遅くなってすまなかった。…お前達は、
「ああ」「…そうだ」
「萌希によく似ている。大雅と凰雅だったかな?」
蒼苑様に突然名を呼ばれ、驚いたのか黙ったままでいる。
「萌希は…どうしている?」
「…姉上はずっと泣いている」
「そうだ!…幾日も何も食べようとしない…お前と子に申し訳ないからと…」
「そうか…」
つらそうに目を伏せる蒼苑様とは対照的に後ろにいた敦子様が前にでてきた。
「萌希…ああ、あの、子が産めなかった女ですか?」
「母上」
「蒼苑、私は本当のことを言ったまで。蒼苑の子を産めない女は我が家には必要ないのです」
「母上!」
「だから姉上を追い出したのか」
「お腹の子一人守れないような者は母になる資格もないでしょ」
「姉上のことを悪く言うな!」
「母上!それ以上言うことは私が許しません」
蒼苑様の厳しい声に強気の敦子様も黙るしかなかった。
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