ハッピーエンドとまでは言わないですが美雪にも何らかの救いを求めたいです
- ★★★ Excellent!!!
エイジや愛をはじめとした、人の悪意に心身を侵され地の底まで落ちた被害者が同じく悪意に触れ傷ついた人々や自分たちのことを分かってくれる頼れる仲間たちに支えられながら上に向かって歩いていく
それ自体はざまぁもとい勧善懲悪ものとしては素晴らしいストーリー構造なのですが、美雪とその母親(特に母親)の現状については喉に引っかかるものがあります
美雪が自分本位な罪深い人間と言えばそれまでなのですが、彼女には善悪に振り切れずあやふやな精神のまま宙吊りになってしまう、成長しきれないまま形だけ大きくなってしまった歪んだ子供としての面があり、その不安定さはいずれ成長を経て自分で正しい方向に歩けるようになった美雪を書かないと見るものにある種の痛ましさを感じさせます
そもそも美雪には純粋な悪意をもって行動する近藤や部長の陰謀に巻き込まれたことで自分の中の自覚すらしていなかった悪魔を目覚めさせてしまったり、そのせいで結果的に自分のみならず家族までもを巻き込んで破滅に向かってしまったりと、彼女自身がこのまま破滅するには同情の余地を生んでしまう要素がいくつかあります
いずれ浮気女として覚醒するはずだった運命だとしても作中においてその爆弾を起爆させたのは部長の主人公に向ける愛憎反転した醜い悪意と近藤の歪んだ趣味嗜好であり、それを知らないまま美雪の母親がこのまま家を売ったり娘との縁を断ち切るのは美雪の母親にとって良くないことであると感じています
もし美雪だけが咎を背負い罰を受けるのであれば「しょうがない」とだけ感じ主人公たちの逆転劇に心を傾けていたでしょう。ですがそこに他者の悪意や罪なき家族の破滅がエッセンスとして加えられた以上彼女の罪と罰の天秤はありえない傾き方になり、今や冤罪と浮気、いじめの傍観という美雪の犯した罪に対し成長できない親との絶縁家を売る二度と弁解の余地を与えられないという罰や陰謀という重しが平衡を破壊してしまっています
他人を巻き込んで地獄に進んでしまった者の辿る道はそのまま地獄に堕ちきるか他者を背負い地獄に背を向け再起の道を辿るかの二択になると私は思っているのですが、もし美雪が前者の道を進んでしまった場合夫に浮気されて以降現在に至るまでの彼女の母親の人生は文字通り何の意味もない無になります
長々と感想を書いてしまいましたが私の思いとしましては、美雪には自分の罪にしっかり釣り合うだけの罰を受け、母親の人生を無駄にしないためにここから成長して自分で善悪を考える人生を歩んでほしいのです