打ち明け

ボウガ

第1話

私には霊能力などない。それなのに、あの時だけは、どうしてか霊感がでた。それによって私は感謝されるはめになった。


両親を事故で無くして以来、私はふさぎがちな子供時代をすごした。大学生になるまでそれは続き、やっと人付き合いができるようになったのは、ご近所さんのある夫婦、というより奥さんののほうだった。



旦那さんがいない日中、暇なときに一緒にあそんだり、色々なお店やお化粧など知らないことをおしえてもらった。この夫婦、新婚夫婦で奥さんが若くまだ20代で、旦那さんのほうは40代半ば、わりと地方を転々と職も転々としている人らしいが真面目にみえた。奥さんですら夫の過去について知らないことが多いという奇妙な夫婦だった。


私は大学にいくときによくバスで旦那さんと一緒になった。時間帯にもよるが、通勤で顔を合わせるたびに、会釈をした。奇妙なのが、旦那さんの隣の席はいつも空いている事だ。


あるとき、奥さんと話しているときに子供の話になった。それとなく奥さんに尋ねるとふと、奥さんはふさぎ込んだ顔をした。

「そんなに長く一緒にいるわけじゃないけどね、わかるの、きっと子供に関して何かあるんだって、嫌いなのか、もしかしたら……2度ほど離婚経験があるからその時の事があるのかも、もしかしたら子供をなくしたとか、向こうにとられたとかね……」

言いずらい事を聞いてしまって謝ると奥さんは困り顔で笑っていた。

 

それからしばらくしての事だった。旦那さんとバスで会うたびに、旦那さんの隣に小さな少女の姿をみるようになる。初めは知り合いの子供かなと思ったが旦那さんと会釈をしたり、会話を少しかわしても一切旦那さんはその子がいないようにふるまう。それにもまして奇妙だったのはその少女が私が彼女にめをむけるたびに人差し指をくちにあけて、シーっというジェスチャーをしてくることだった。

(変わった子だなあ)

 くらいに思っていたが、奥さんにそのことを尋ねるのもあれだと思ったし、今度、勇気を出して聞いてみよう。と考えた。


そしてある日、偶然に一緒のバスにのり、奥さんの話をして、ふと、少女の肩にてをやった、私の手は少女の体はするり、とすりぬけた。そこでようやく気付いた。この少女、人間じゃないのだ。

「あ、あの……」

「??」

 気まずくなった私は、あわてて話をとりつくろった。

「きっと亡くなったお子さんだと思いますけど、旦那さんの隣にいつもすわってますよ、私、霊感があって」

 そういうと、旦那さんは肩を震わせ顔を覆って泣き始めた。

(悪い事をしちゃったのかな……)

 だが旦那さんはいった

「ありがとう……これで決心がつく」


その日の夕方、偶然と奥さんに出会い、うれしくなりこのことを話した。

奥さんは笑っていった。

「これで我が家にも子供が授かるかもしれないわね」


その夜、旦那さんは奥さんに打ち明けたそうだ。自分は何度も結婚したが子供はつくらなかったと。そして、震えながら、泣きながら言葉をつづけた。

「す……すまない、すまない」

 奥さんは泣きながら、旦那さんの言葉をまった。しかし、旦那さんの話は、思ったものとは違ったそうだ。


 彼が子供を避ける、その理由が、10数年前のある日、少女を車でひいてしまい、以来ずっと子供をさけ、逃げているのだと。夢にも何度もその少女がでて、罪を償えと最速し続けるのだと。


 その話を後日聞いて気付いた。あの時の旦那さんの泣き方は、喜んで泣いているというより何かに怯えてないていたようだったと、ごくたまに奥さんが、夜中に子供の悲鳴や、妙な物音を聞くことがあるといっていたこと。


 結局、旦那さんは警察に出頭し、捕まることとなった。奥さんは刑務所から旦那さんが出てくるまで、じっとまつそうだ。そして私の事も見捨てず、いまだに仲良くしてくれている。

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打ち明け ボウガ @yumieimaru

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