第14話
14話
時は夜、場所は寧宅。
大魔王様は圧力鍋でもらった魚の煮付けをつくり、もらった野菜でサラダを盛り、買った果物を切り分けて、透が来るのを待っていた。
透とは寧の紹介で出会った。同じ高校の出身らしく、仲は良好。寧は進学、透は親の店を継いだ後も、そこそこ頻繁に交流していたようだ。
ちなみに透は高校時代、ファンクラブが出来るくらいには女子にモテていたらしい。いわゆる王子様系、宝塚系の顔立ちだ。……寧もファンクラブには入っていたそうだ。
「そろそろ煮付けもよいかの。……お、来よったな」
「おじゃましまーす……寧はいないのかい?」
「あやつはおらん。今日は2人でのんびり、じゃの」
「そっか。あ、これ手土産ね。冷やしておいてくれるかい?」
「毎度すまんのう。寧にもちゃんと言っておくからの」
商店街にある名店のチーズケーキを手渡し、透が席に着く。ちなみにチーズケーキは寧の大好物だったりする。そういうところだぞ透。
「商店街の皆がいろいろくれるんじゃが、半分くらいは透へのお土産代わりなんじゃろうなぁ」
「みんないい人だからねえ。父もいつも商店街の皆の話しかしないんだ。嬉しそうだからいいんだけどね」
「父上殿はその後どうなんじゃ?」
「うん、まあ、まだ歩けはしないけど、元気にはなったよ。やみちゃんと、寧のおかげだね」
「うむ、まあ、大事な友人の身内は……さすがに見捨てられんのじゃ」
大魔王様が日本に来てまもなく、寧に拾われてすぐの頃、透の父が大事故に巻き込まれた。奇跡的に命は助かったが、半身不随、口も開けず、かろうじて動かせる指をつかった筆談でのみコミュニケーションをとれるような状態であった。
透から寧に連絡が行き、それを聞いた大魔王様は安請け合いをした。「まぁ1度くらい診てやらんでもないぞ」と。
大魔王様は透の父に、回復魔法をつかった。それも、魔族でも使えるものが少ない、大規模で複雑なものを。透の父はみるみるうちに回復し、それはもう大変な騒ぎになり、透には全てがバレた。大魔王様はようやく焦った。
のちに寧に口酸っぱく説教をされるのだが、それはおいておいて。
「あの時は本当に、君が天使に見えたよ。あらためて、ありがとう、ね」
「……天使じゃのうて大魔王じゃがな」
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