僕の年上の奥さん3


 その言葉にうちの奥さんである帆貴さんが、「情けない先公だな」と言って笑う。



「仕方無いじゃないですかー!かよわいΩ女性にとってはα男性って怖いのですよ!威圧されるのですよ、威圧!」


「その前に先生じゃねーかお前」


「言っときますけどね、αである湯川君には私でなくてもう一人別の先生が付く筈だったんですよ。それが急遽変更になって仕方がなく~」


「あーハイハイ、副担任だったっけ?」


「そうなのですよー聞いてくれます?あの化粧バ…副担任、「デートだからやっといて」って逃げやがった!」



 今化粧ババアって言いそうになっていたのよね。

 確かに目の前の担任よりも年上だったような気がするけど。



「おう、チクっとくか」


「そうして下さい!」



 何だかな~という会話が目の前でポンポン交差されていく。

 そうか、あの副担任逃げたのか。

 今回のこと学校側に知れ渡ったら来年辺りはこの学校から消えるのではないかな。もしくは今学期早々かも知れない。結構問題あるからなぁ、あの副担任。



「ん?久仁彦お前副担任と何かあったのか?」


「先日副担任が生徒である僕にハニートラップを仕掛けて来ようとしていたので、その日から姿を見掛けたら逃げまくって居る真っ最中です」


「人として、先生として最低だな。俺の【運命の番】である旦那を横取りしようだなんて。よし、〆るか」


「先輩~!せめて学校付近では流血沙汰はヤメて下さいね!警察とか面倒なので」


「学校付近で無ければ良いのか」


「寧ろ歓迎。大歓迎。熱烈大歓迎。いけー先輩!」


「それで良いのか」


「現時点で苦労させられておりまして…」



 ドヨーンとした空気を醸し出す担任。

 と言うか僕の進路指導の話はどうやら何処かに飛ばされたようだ。

 予定時間は大丈夫なのだろうか?一人辺り30分か一時間では無かっただろうか。もしかして僕が本日最後?僕の前の生徒は結構早めに済んだから、その分僕の方で時間を掛けても良いと判断しているのだろうか。

 久しぶりに先輩に逢えたから話が弾んで居る、とか?

 それはそれで先生としては駄目なのでは?



「その手の話は『今』する事じゃねーよな」


「でした」



 懸念していたが、進路指導の話しに戻って来たらしい。

 やっとですか。

 イヤ良いですけどね。



「えーと、お二人のご結婚は何時するので?」



 それ今聞くこと?

 担任、生徒のプライベートに首突っ込み過ぎでは?



「それ、進路じゃねーからな?」


「ですね、でも気になります」



 ですね、じゃないです担任。

 こっち向いて「でもこのままだと花音ちゃんが可哀想では?」と。あくまで花音か。花音が大事か。可愛いは正義という主張は先生として良いのだろうか?結婚する当事者は僕、湯川久仁彦と阿久津帆貴さんなのに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る