第5話 THE INTERLUDE

彼女は台風騒動の終息と共に退院して家に帰ってきた。炎症性の症状を抑えるためのステロイドと免疫抑制剤、それと併用する各種錠剤。定期通院をするため量は2週間分だが、これを毎日飲むのであるから其れなりの量である。


「これでおなか一杯になる」

「ケーキ食べたいのに」


「今そんな高カロリー取ったらおなか壊すだろう」


「まぁね」


彼女は窓の外の海辺を眺めながら一錠ずつ飲み込む。

海岸線には先日の台風によって流れ着いたゴミと流木が溜まっている。役所と消防署はしばらく忙しい事だろう。大きな事故が起きなければいいなと思いながら立ち上がり、私のアパートに帰る準備をした。

窓を開けようと手を掛けたときに彼女が話しかけてきた。


「通り抜けできるようになったって言ってたよね?」


「あぁ、ウン。電磁波と同じ要領で。」


「光がガラスを抜けるみたいに?」


「そうだよ」


「見せて!」


彼女は目を光らせている。体力を使うので、正直やりたくないが元気そうな彼女をみられる機会は限られているので断る選択肢はなかった。私は手荷物と共にガラスを通り抜け、サーカスの演技のように手を振ってアピールした。彼女は手話で


『ありがとう』


と言う。こちらも答えて親指を立ててからアパートへ向かう。

アパートに着くと正面に管理人の大森さんと消防団の矢立さんが話している。私を見つけるなり大森さんが声を掛ける。


「小澤さん!!!」


「おはようございます。」


「あんなぁ、昨日ので何人か窓割れてってなぁ。自分のところも確かめて貰っていい?」


「そうですか。わかりました。」


「木ぃ飛んっきたみたいで2階は全滅ってよぉ、2階の対応で上はまだ見れてないんだよ」


頼むから自分の部屋は大丈夫であってほしいと願いながら階段を上る。窓が壊れていれば、あの暴風なら用意に部屋は水浸しだろう。機材が壊れていたら大変に面倒くさい。


「これはまずいなぁ・・・」


柄にもなく独り言が出てしまった。被害は想像を超え、窓を突き破った木は機材に衝突し跡形もなく粉砕されていた。ドラマチックなどど浮かれていた昨日の私にうんざりしてくる。ここで暮らす人々の思いがよくわかった。さて、大森さんにすぐに言いに行くべきところだが機材の存在がばれてしまってはまずい。機材の破片をかき集めて、夕方になったあたりに大森さんに連絡した。


「あぁそれは大変ねぇ。」


「すみません。連絡まで時間かかっちゃって。大切な私物だけでも回収したくて」


「いいのよいいのよ。わかった。矢立さんとかには言っとくわ。」

「今日どうすっの?」


「うーん。ホテルにでも泊まろうかと・・・」


「ホテルもう空いてないよ。ウチ来なさい。息子の部屋空いてっから。」


ホテルに泊まった、という体での野宿でも一向に構わなかったが、この島において一度でも怪しまれれば居られなくなるし、余計にアリバイ工作をするような羽目になってしまっては割に合わないので、大家の親切に甘える事にした。

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THE BIRTH YachT @YachT117

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