第21話 危機

 異形の物は、葵と茜の放った光を浴びると腐敗した体に無数の穴が開いた。鋭い歯の奥から獣のような声がした。穴からどす黒い体液が勢いよく流れ出した。屍は前のめりに倒れた。

 葵は自分の右手指先から放たれた紫色の光の威力に戸惑いが隠せなかった。

「茜と葵は同じ能力を持っている。葵は今、目の前の脅威に無意識に反応した」向日葵は葵が初めて、その秘められた能力を発現させたが、茜のようにコントロールすることは出来ていないと思った。

「なぜ、僕にはこんな能力があるの」「八百万の神が私たちに特別な力を与えている。その力は葵と茜を出産した時に始まった。葵と茜が双子ということは話したわよね。出産は難産だった。異変は葵の時からあった。葵はかろうじて息をしている仮死状態だった。茜は息もしていなくて、医師は死産だと言った。私は必死に救命措置を頼んだわ」「でもダメだったんだ」「いえ、救命措置のおかげで息をし始めた」

「医師も驚いていたわ。葵も茜も元気に産声を上げていたのよ」

「その後に何が起こったの」「その日の夜、夫の秋生が生まれたばかりの茜を抱こうとしていた時に異変が起きた」向日葵はその時の恐ろしい光景を思い出していた。

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