第19話 霊場
葵は軽トラックがどこを走っているのか分からなかった。フロントガラスからも助手席の窓からも景色がぼんやりとしか見えなかったからだ。こんなぼやけた視界で向日葵はよく運転出来ると不思議だった。
「母さん、いったいどこに行こうとしているの」「霊魂が宿る場所、富士山の樹海を目指している」「茜は別世界にいると言ったけど僕には時々見えるのはなぜ」
「それが葵の能力が目覚め出した証拠なのよ」「周りは霧に包まれているけど運転は平気なの」「この霧は茜が奴らに感づかれないように結界を張っているの。だから心配ない」葵にはどこを走っているか分からなかったが、向日葵にははっきりと行き先が見えているようだった。葵は真っ白な霧を見ているうちにいつの間にか眠りに落ちていた。どのくらい寝ていたのか、軽トラックが急停止したことによる大きな揺れで目が覚めた。目覚めた瞬間、左肩から鈍痛が襲ってきた。
葵は霧の向こうに白いドレス姿の茜が立っているのを認めた。遠目にも茜の顔は氷のように青白かった。
「さあ葵、茜の所に行きましょう」一足先に軽トラックを降りた向日葵は霧が立ち込める樹海の中を歩き始めていた。葵は慌ててその後を追った。茜はふたりに背を向けると樹海の奥へと穂を進めた。
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