第12話 生い立ち
あたしを生んだ母親は生まれて6ヶ月のあたしと兄を置いて家を出ていつたと聞いていた。
父は道路開発で測量し図面を引く仕事を日本のあちこちでしていたせいかほと
んど出張で家にいる事はなかつた。
あたしはおばぁちゃんと兄ちやんとまあ楽しく暮らしていたが幼稚園くらいになると とにかく父が新しいお母さんなる人を連れてくるようになる。
父は1 83cmのイケメンだつたから後からあとからやって来る
よく覚えてはいないがあたしが大人の女の人を嫌いになったのは
このせいなんだと思う。
ばあちゃんはこの頃長野に住む場所を変えていた。
家系も男家系 近所に住んでいる従兄弟、父の兄弟も男ばつかり
あたしは父の家系初めての女子で可愛い可愛いと言われてたけど
遊ぶ相手が男ばかりとくれば………探検に外でドッチボール、遊戯王のカードと
大人が考えていた女の子とは程遠い真つ黒に日焼けした子供だつた。
それでも中学生にもなる頃には初恋もしたし 女の子ぽっくはなってっいた。
けど女子特有のネチネチ感、めんどくさい関係が嫌いで
仲のいい男子といる事の方が楽だったな。
それでもいつからか男女共に隔てもなく案外楽しく皆と遊んでいたっけ…
学校では明るくよく話す子だった……
家で義母ともう何年口をきいていないんだろう… 思いだせないくらい前…
あたしは家では無口と言うより声を出す事をしなかった。
兄ちゃんだけはいつもあたしの味方でいてくれたけど兄ちやんがいなければ
あたしはいつも家の中で一人
静に本を読んでいるか想像の世界にいた。想像は無限~
あたしの望んだ家族と生活がそこにあつた。
その場所であたしは笑い声に包まれていたんだ。
中学3年に上がると直ぐ義母が兄ちゃんとあたしを座らせると
父と別れる事を……話した
一度も参観、面談に来ることもせず三者面談は先生とあたし二人
弁当は自分で詰めて作つた。 洗濯も自分でしていた。
いつからこの人と話さなくなったのか
心の中で何回殺したのか…… なのに……
「しいちゃんごめんね」そう言つたんだ。 涙がポロポロこばれてきた。
何年も何年も憎んで嫌いと思つていたのに母親の愛が欲しかつた事の裏返しだ
つたんだと気づいた。
どうすれば愛してもらえるのかを知らなかつた。
義母が一言
「しいちゃん何でも一人でして甘えてくれなかったから可愛くなかったんだよ」
甘えるだけだったなんて そんな事だったんだ‥
でも甘えるってどうしたらよかったんだろう…… まっもういいか…
中学3年6月‥…… 高校受験真つ只中あたしは男兄弟ばつかの親戚の家には
迎えてもらえず父の弟のおじさんがいる福島ヘ
土地開発をしていた。北海道から仕事をしに来ている8人が住む寮
長野からはおばあちゃんが来てくれた。おばあちゃんはその寮母となった。
陽気なおっちゃんに まだ20代後半くらいの兄ちゃんもいた
あたしはこの兄ちゃんみたいな やす君に高校へ入ると車の運転(四駆で開発中の
土地を走らせた)とエンジンルームの構造を教えてもらつた。
18になつたら速攻免許を取ろうと思つた。 まずは原チヤだな‥
受験生での田舎への引つ越しはセンセーシヨンな出来事だつたのだろう
開校以来6人目の転校生……つて そりゃこうもなるのか……
転校初日職員室の前には ずらっと生徒がひしめき合っていた
皆が見ていた… アハハ 何なんだ
転校先も近所の人もあたしの噂でもちきりだつた
転校してきただけなのに 田舎ってこんなんになるのか…
マジでびっくりした
埼玉から越してきたのにいつの間にか東京からになり
ばあちゃんの手伝いをしていたあたしは随分と偉い子だと褒める人
こんな時期に転校してくるなんて何かしでかしたんだろうと
ありもしない話を作りあげ広める人…
噂は絶えなかったけど中学の弁論大会で一席を取ると挙って凄いと持ち上げて
くれた。
話すと案外いい人だねって言う子
でも なんだかんだ 小さななその学校は全校生徒が仲良くて
いつの間にか 幼い頃からそこにいたかの様に溶け込んで笑っているあたしがいた
あたしの良いところは度胸と愛嬌
(男は度胸 女は愛嬌と言うけどあたしはどっちも兼ね備えているつもり)
笑つていれば良い方へ転がる……ような気がする
噂もなくなりかけてきたのに
高校へ入り原チヤを乗り回すようになると当然のようにあたしはダメ人間のレッ
テルを貼られた あたしはあたしなのに‥‥
面白いつくり話が独り歩きをしていた 暇な人がいるもんだ…
あたしはこの時学んだ
他人の噂はあてになんないし自分で確認したことを信じようと思った。
当たり前の事だけど……ね
早くこの寮を出て兄ちゃんと暮らしたかった早く大人になりたかった
そしてあたしはさっさと結婚して家族を
あたしが想像していた笑いで包まれる家族をつくりたかったんだ
なのに……
なのに
神様は残酷だ
どうするとこんな事になるのか?
誰がこう仕向けたのか?
好きな人と家族になる
ほんのちょつとのちつさい夢なのに……
たくさんの幸せを手にしてる人は他にもいるだろうに………
なんであたしから取るんだろう
なんで?
この時からあたしの『なんで?』は何度も何度も繰り返し頭の中で響いた
前からあつた爆弾は成長して赤ちやんの拳くらいに周りにもゾンピ菌はいた
全摘‥‥ あたしはママになれないんだ
放射線を当ててからの手術……
散らばつたゾンビを倒すため抗がん剤治療へ…
倒すためじゃないか……・ 延命する為の治療
命をのばすため
医学は発達してもう誰もが悲しまなくていいようなとこまで来てるって
TVで言っていたような…
あたしのとこには悲しみがこんにちはってやってきた…
なんで今なんだろう
なんで なんで なんで なんでだぁ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ――
じゅん
あたしは治るための治療ではないんだ すでにあちこちにゾンビ菌はいた
あたしの血液に乗つてゾンビは遥か遠い場所にも巣を作つていた
そんな事言えなかった……
もう このゲームもじゅんとも離れなくちゃいけないのかなぁ
夜になると死神が話しかけるようになっていた
もうすぐ
もうすぐおしまい‥‥
真っ暗な穴に落ちていく
落ちて落ちて‥‥ 目が覚める
眠るのが怖かつた
怖い‥‥
【レオ(じゅん)】
なんか・・・
もう2年前・・・
せめて・・・
読み返すたび・・・
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