八、紫からのお誘い



 その日の夜、私は富貴の部屋を目指してそろりそろりと忍び足をしていた。


 流石に誰かに見つかったら、その、ちょっと外聞が....って感じだから....ね....


 特に、紫に見つかったらとんでもない。紫のコワイ笑顔を思い浮かべて今日の昼にあったことを思い出す。あれは巧みだった。



 ◇◆◇



 昼下りの頃、私はハクを紅白の紐で木に繋ぎつつ、神社経営に勤しんでいた。

 お参りに来ていた人達が帰り、ホッと一息ついたとき、紫がこちらに向かって歩いてきたのが見えた。


 ・・・あれ?巫女服から普段着になってる・・・・


 私は頭に疑問符を浮かべつつ紫の方に駆け寄ると、紫は「今日はもう終わりにしましょう。私は今からハクを連れて散歩に行くのだけど、葵さんも来る?」、と木に繋がれたハクに視線を移した。


 散歩、と聞いて葵は自分でも顔が輝いていくことがわかった。


 「はい!ぜひ!」


 「ふふっ。じゃあ、一回家に戻って着替えてきなさいな。この服では悪目立ちするでしょうから。私はここで富貴と片付けをしておくわ。」


 「ありがとうございます!」


 弾む足を抑えつつ帰路についた葵は、富貴がこちらを愕然として見ている意味を知る由もなかった。



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