逃げるなよ。唯の卑怯者め。

天を仰げど、神はいない。

紙に書かれるよりも当たり前のその事変は。


でも当たり前と思うには淋しくて。

だってそうじゃない? 何処に居たって孤独って意味なのだもの。


神がいないことは重々承知でのたまいます。

私に、私の心に在った、確かにあった逢魔が時は何処へやったのですか?


夜をくれとまでは言いません。そこまで欲張りな男でもありません。

ただ思うのです。


詩も書けなければ、小説さえもままならない。

あゝいや、それすら手が付けられない程に私の心は真昼間なのです。


真昼間なのはいけません。

だってそれは気が抜けている証なのだから。


深夜もよろしくない。

それはとても恐ろしくて、とても人が生きている時間帯じゃないもの。


ねぇ神様。いや、この際神様でなくとも良い。

淋しさを下さい。一人きりの思い出を下さい。


……待て。胸中の神様は何処へやった?

彼は確かに私の中に居た筈だ。


オイ待て。逃げるんじゃない。

胸中の神を奪っておいてお前だけのうのうと生きるなんて許されるものか。


みじめにむごたらしく死んでゆけ。

神を奪ったんだ。それぐらい妥当な死に様だ。


ハハハ、明日私は死ぬぞ。

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詩集「孤独の詩」 口十 @nonbiri_tei

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