母を看取る短詩10篇

戸惑いつつ無理な延命は不要と告げる白い通路の端


病床に伏す母の寝息確かめてほっと息をつく


点滴だけでもう六ヶ月無意識の中で何か歌ってる声にならない母の声


覚悟はしているとうにしていると仰ぐ院庭の曇り空


ヒューヒューと息する母の浮腫むくんだ手をさするしかできない無力


かすかに口を開けてしずまる母の小さな顔をただみつめる


祭壇で微笑むふくよかな遺影を懐かしく見上げた春


桃の字を冠する新たな名を得し母を見送る斎場の午後


ひがな仮祭壇前に眠る猫はさながら遺骨を護るがごとく


亡父の隣に寄り添う母の骨壺を確かめて石の封をする

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詩集「あふれ出る詩」 仲津麻子 @kukiha

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