犬への弔辞




かわいくて賢くて大人しくてお利口で、ビビリで人見知りでちょっと気難しくて、お散歩(特に冬の日のお散歩)とちっちゃいぬいぐるみとお母さんのことが大好きで、お風呂とドライヤーと雷と側溝の網が嫌いだったクーちゃん。今までありがとう。




私が一人暮らしを始めて会う時間も減ってしまって、だんだん歳を取ってボケて私のことも忘れてしまって、目も耳も鼻もきかなくなってしまって、歯もほとんど抜けてしまったけど、それでもごはんだけはいつも食べてたね。頑張って生きたね。長生きしたね。



たまにご飯あげるの忘れたりお散歩に連れてくの忘れてたりしてごめんね。クーちゃんとお散歩するの楽しかったよ。



一緒に遠出もしたよね。車に乗る時はいつも運転するお母さんの膝の上に乗りたがったよね。車酔いしてゲボったことも何度かあったよね。そのゲボを私が両手でキャッチしたこともあったよね。



クーちゃんが大好きなお母さんは、それ以上にクーちゃんのことを大好きだったよ。たくさんクーちゃんのことを怒ってたお父さんも、実はクーちゃんのことを大事に思ってたよ。私ら3人も、新しい兄弟が増えたみたいで楽しかったよ。でももしかしたらクーちゃんが1番お兄さんだったかもしれないね。



クーちゃんはうちに来て幸せでしたか。私たちはクーちゃんがいてくれてとても楽しかった。幸せだった。本当に本当に幸せだった。私たちの6番目の家族になってくれてありがとう。



私は死に目にあえなかったけど、お母さんもお父さんも妹も見守ってくれてたから、きっとさみしくなかったよね。苦しい思いをしないで済んだよね。年末でみんな家にいるタイミング見計らってた?賢い奴め。



天国とか死後の世界とか信じちゃいないけど、魂だけになったクーちゃんが、また昔みたいに元気に走り回れるような場所に行けてればいいな。



ありがとう。さようなら。








令和元年12月29日








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