第32話 方針決定
ここまで女神イーシュの話を黙って聞いていたが、思うことは一つだ。
「
「どうしてなの?」
「説明は不要だろ」
「ぐぬぬ……」
女神イーシュの話を聞いて思い出したのは『個か全か』で二つに分かれて戦うアニメだった。
『個』で争うから世界は破滅の方向に進むのなら『全』で一つになればいいとか、そういうストーリーだったと思う。
「だから、『個』であることを認めないイーシュの世界は俺からすれば悪でしかない」
「待って! 別に『個』を認めないなんて言ってないでしょ」
「確かに言ってはいない」
「でしょ!」
「だけど、そこにいるだけで何もせずにただ死ぬだけの存在を生きていると言えるのか」
「うっ……それは……でも、他のと争わなくてもいいのなら、それはそれで幸せなんじゃないの」
「それは誰が感じている幸せなんだ」
「誰って……それは」
「ただ、そこにいて何も考えることを放棄させられている存在がどうやって幸せを感じるんだ?」
「……」
ここに来て女神イーシュの話を聞き、女神イースがしてしまったことを聞いたが、女神イースを敵として認めることが出来ずにいた。確かに魔族を使っての侵攻はヤリ過ぎだといえなくもないが、女神イースと話し合える余地はあるように思える。
だが、問題は今目の前にいる
『肯定します』
でも、始末することも出来ないんだろうな。
『肯定します』
精神体だから殺れないのなら、実体を持たせるしかないのか。
『肯定します』
でも、何に憑依させるか、それが出来るのかが問題だよな。
『肯定します』
そこまで考えて「いや、待てよ」と考え直す。
別に目の前の
『肯定します』
出来るんだと
「よし、俺の方針は決まった」
「勇者してくれるの?」
「ソレはお断りだ。そうだ、思い出した。お前、リザードマンの長になんかしただろ」
「な、なんのことかな~」
「俺に嘘は付くなと言ったろ」
「ちょ、ちょっとだけじゃない」
「いいから、何をしたんだ」
「ちょっとね、あなた達と会った時に『神獣と使い』だからって教えてあげたのよ。ね、ちょっとだけでしょ。イタッ!」
俺はハリセンで『バシッ!』と
「いいか、俺は俺の好きなように生きる。もうお前の使徒だと言わせない」
「それは困る」
「俺は困らないし、使徒扱いされる方が困る」
「ぶ~」
女神イーシュは両頬を膨らませて反抗するが、もう単なるぐーたらにしか見えないロリ駄女神には使命感どころかなんの罪悪感も湧いてこない。
「もう、お前がこの世界に干渉しない方が上手く回るような気しかしない」
「そんなことはないでしょ」
「そうか? だが、お前は好きなだけ寝ていられるんだぞ。何もせずに寝ているだけでいいんだぞ。今までの生活と何が違う?」
「あれ? そう言えばそうだね」
「だろ? だからこのままここでジッとしてろ」
「……」
「じゃあ、邪魔したな」
「ねえ」
「なんだ?」
「また、呼んだら来てくれる?」
「来てくれるも何もお前が勝手に呼び出しているんだろうが!」
「そうだけどさ……ねえ、いいでしょ」
「勝手にすればいい。じゃあな」
「じゃあ、勝手にするから」
女神イーシュに別れを告げると、俺は見慣れた宿にいたが頭に何やら柔らかい感触がある。
「気が付いたか」
俺の顔を覗き込んでいたアオイと目が合い、アオイが俺を気遣ってくれた。
「アオイ、どのくらいの時間が経った?」
「お前がその箱に祈ってから五分も経ってないと思うぞ。祈っていたと思ったら、急に気を失ったように倒れたので、タロに枕になってもらった」
「そうか。ありがとうなタロ」
『ワフ!』
俺は体を起こすと両腕を上に上げ、簡単に伸びをする。
「それで殴ることは出来たのか?」
「うん、まあね。でも、問題も増えたかな」
「ほう、それは難しいのか?」
「そうだね。ちょっと当事者にも聞いてみないと分からないけど、簡単にはいかない感じかな」
「なら、俺の助けが必要になりそうだな」
「そうならないようにしたいけどね」
「ふふふ、いつでも言ってくれ」
「うん、分かったよ」
今日は、これ以上話すと色々気が昂ぶってしまい眠れなくなりそうだったので、詳しいことは明日、町を出てから話すことを約束する。
「でも、会ってくれるんだろうか。ちょっと不安だけど、教会に行けば会えるよね」
『肯定します』
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