第26話 言い伝え通り

 タロもキュリも魔法が使えたことが嬉しいようで、ずっと魔法を試しては嬉しそうにニヤニヤしている。


「ねぇ……」

『ズドン』

『スバッ』


「ねぇってば……」

『ズバババッ……』

『スパパパッ……』


「もう『雷撃』……」

『『アババ……』』


 さっきから話しかけているの全然俺の方を見やしない魔法に夢中な二人に向けて軽く電撃を放つとやっと魔法を打つのを止めてこっちを見てくれたんだけど……。


『何するんだ!』

『ひどいよ』

「さっきからずっと呼んでいるのに無視していたのはそっちでしょ! 違う?」

『あ……』

『ごめんなさい……』

『でもよぉ使えないと思っていた魔法が使えたんだぞ。それがどれだけ嬉しいことかお前には分からないだろうな』

『そうそう』

「はぁ?」


 キュリが俺に対し『魔法が使えることの素晴らしさ』みたいなことを感動しながら俺には分からないだろうと言うが、喉まで出掛かった言葉をグッと呑み込む。俺だって、魔法が使えない世界、魔法に憧れていた世界から来たから知ってるわ! と言いたいさ。それはタロも知っているハズなのに。


「とにかく、里は近いんでしょ。遊んでないでちゃんと案内してよ」

『お、そうだった、そうだった。悪いな』

「その前にさ……自分達がしたことをちゃんと理解している?」

『ん? なんのことだ?』

『ボク達のしたこと?』

「ああ、ほら。ちゃんと見て」

『『あ……』』


 キュリとタロが好き放題に魔法をぶっ放した結果、川面がキラキラと光に反射して静かな川原だったのに……今は、どんな戦闘があったのかと思われるくらいに地面はえぐれ、木々は倒れている。


「ほら、こんな木がそのまま下流に流れたら危ないよね? こんなに地面が抉れていたら誰かが転ぶよね? ね?」

『スマン』

『ごめんなさい』


 俺は倒れた木々をアイテムボックスに詰め込み、抉れた地面を土魔法で均す。


「じゃあ、改めて案内よろしく」

『お、おお』


 キュリを先頭にリザードマンの里を目指し歩くこと数時間。なんとか日が落ちる前に辿り着けたようだ。


『ほら、ここがそうだ』

「え? ここ?」

『ああ、まあ里と言うよりは避難場所だけどな』

「避難場所……それってもしかして……」

『ああ、俺達の住処だった沼地はもっとここから奧にある』

「その話って。まさか?」

『聞きたいだろ? 聞きたくなっただろ?』

「遠慮します。ほら、長に紹介してよ」

『お前、そこは「是非!」っていう場面だろ』

「だって、絶対に面倒くさい話でしょ。そういうのは他の人に任せればいいじゃない。ほら早く!」

『ったくよぉ少しくらい聞いてくれてもバチは当たらないぞ』

「バチは当たらなくても疲れることはなるべくしたくないの。ほら早く。あのお爺さんっぽい人がそうなんでしょ」

『疲れるって……ああ、もう分かったよ。来い!』


 キュリは俺に話を聞いて欲しいと言うが、沼地から追い出された話なんて絶対に面倒ごとに決まっているハズだ。

『肯定します』


 ほら、やっぱりだとメッセージを読み流すと長い顎髭を生やし座っているいかにもなリザードマンの前にキュリと立つ。


『おう、キュリどうだった? ヒトの協力は得られそうか?』

『オジイその話の前に紹介したいヤツがいるんだけど。おい、コータ』

「初めましてコータです」

『タロだよ』

『ん? その子はヒトの子だな。それにそ……そちらの方は……』

「え?」


 オジイと紹介された長はタロを見るなり綺麗な土下座を披露する。


『オ、オジイ?』

『なにをしている! お前達も頭が高い!』

『『『……』』』

『ん?』


 オジイはキュリが話しかけるとタロを前に無礼だと言わんばかりに周りのリザードマンにも土下座するように強制する。


「タロ、何かしたの?」

『ボクは何もしてないよ』

「キュリは何か知ってる?」

『う~ん、俺からはタロを崇めているようにしか見えないけど……まさか?』


 確かめようにもこのままじゃ話も出来ないのでオジイになんとか顔を上げてもらい他の人達にも土下座を止めてもらうように頼む。


『使いの方がそう仰るのであれば』

「え?」

『あなたは神獣様の使いなのでしょ。だから、我々と言葉を交わすことが出来るのではないでしょうか』

「え? 俺が使い? タロの?」

『ん? 違うのですか? しかしタロ様は神獣であらせられます。我々の言い伝えによりますと「神獣と共に使いの導きがあるだろう」と言われています。そして今ここに神獣であるタロ様と使いの……なんという名ですかな?』

「コータ……です」

『お~コータ様の導きにより我々リザードマンの道が開かれるというもの。さあ、お願いします』

「え? 何? タロ、どういうことなの?」

『分からないよ』

『だから、話を聞いといた方がいいって言っただろ』

「話を聞いて欲しいのはこっちだってのに……」


 まずはお互いに落ち着いて話をしましょうということになり、リザードマンを代表してキュリとオジイの前で俺が頼みたいことを話してみる。


『ふむ、なるほど。川を遡り湖まで行きたい。そして、その船を引っ張る為に力を貸して欲しいと、そういうことですな』

「そう、どうかな? 報酬なら、問題ないと思うよ。相手は王家だからね」

『まあ、そうですな。その程度なら問題ありますまい「じゃあ」……まあ、慌てることはないでしょうよ』

「いや、でもなるべく急ぎたいんだけど」

『しかしですな。見ての通り我々はここで生活しております』

「うん、それはそうだね」

『ですから、ヒトが多く利用するとなるとイヤな諍いも起きるでしょう』

「あれ? それは勘違いだってキュリから聞いたけど?」

『今までは……ですな』

「ん? どういうこと?」

『ですから、その勘違いだったということが広まれば「リザードマン恐るること無し」となりイタズラに仕掛けてくる連中もいることでしょう。現に今もそういうのがたまにおります』

「それは……」

『別にコータ様を責める訳ではありません。ただ、私共が川の側にいる限りはそういうことも今後尽きることはないということを分かっていただきたいのです』

「じゃあ、どうすれば……あ! やられた……」

『なんのことでしょうか。ふふふ』


 オジイと話をして水上運搬をすることは問題ないだろうと一応の了承は得られたのだが、問題はそこではなく湖を利用しての人の往来が増えることでリザードマンに対する被害が増えることを暗に心配しているんだと言う。


 じゃあ、それを減らすためにはどうすればいいのかと言えば、元の生息地である奥の沼地に帰りたいということになり、キュリが散々話を聞いて欲しいと言っていたことに繋がるのだろう。オジイも話し終わると口角の端が上がりニヤリとしていたもの間違いないよね。

『肯定します』

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