第16話 集合からのダンジョン
アヤネはゲーム内にダイブしてから待ち合わせ場所になっているサティの工房に向かった。そして工房に入るとすでにサティが来ていた。
「サティさん、こんばんは。」
「こんばんはぁ。」
2分ほど経ってからユアも到着した。
「ごめん、2人とも。遅れちゃった。」
「大丈夫よぉ。」
「大丈夫大丈夫。その分、働いてくれるんでしょ?」
ユアの顔が盛大に引きつった。
「も、もちろん。ま、任せちゃってよ。」
「それじゃあ、行こうか。」
「「お~。」」
3人は工房を出て南の森に向かう。
「サティさん、レベル上げします?ダンジョンに着くギリギリまで。」
「大丈夫よぉ。それと、サティで良いわよぉ。」
「そうですか。でも、年上だし。」
「ここは現実じゃないから良いのよぉ。」
「なら、そう呼びます。」
「ユアもねぇ?」
「分かりました。」
3人は襲ってくるモンスターをユアとアヤネが難なく倒して工房からも見えていた大樹に近づいていった。
「どんなダンジョンかな?」
「ボスモンスターを倒すだけで良かったんじゃなかったっけ?」
「たしかぁ、そうだったはずですぅ。」
「1回の戦闘に勝てば行けちゃうんだ。....簡単そう。」
最後に小さく呟いた言葉をアヤネは聞き逃さなかった。
「なんだって?簡単ならスキルの補助いらないよね。これでサティのサポートだけになったから楽になったわ~。ユア、ボスよろしく。」
「あ、へ?」
唐突の`ボスはユアが倒してね´発言によってユアの口はポカンと開き、目がパチパチしている。
「えっと、アヤネ?て、手伝ってくれるよね?ボス倒すの。」
アヤネはユアの方を向いてニッコリするとサティに顔を向けてユアをスルーした。
「サティは武器使うの?」
「はえっ!?.....あ、一応、弓だけどぉ。生産職になるためにDEXめちゃ入れたしぃ。」
ここで自分に話を振ってくるとは思っていなかったのだろう。可愛い声が出てしまった。ユアはアヤネがサティに話を振ったときから「あれ?私、キラワレタ?キラワレタ、キラワレタ、キラワレタ、キラワレタ、キラワレタ、キラワレタ、イヤダ、イヤダ、イヤダ、イヤダ、イヤダ。」と壊れたラジオみたいになっている。それを見てアヤネはめんどくさいなぁといった感じで溜め息をつき、ユアの質問に答えた。
「ユア、ちゃんと手伝うから。元に戻りなさい。壊れたラジオみたいよ?」
サティはその言葉を聞いて「あんたが原因でしょうに。」と視線を向けているがアヤネは気づかなかった。そしてユアはアヤネの言葉で正気に戻った。
「アヤネ、もうすぐ?」
「ん?あ、うん。もうすぐだね。」
「そう言えばぁ、アヤネはどうして私の武器を聞いたのぉ?」
「ああ、武器使えるなら使ってもらおうかなと。」
「そういうことねぇ。わかったわぁ。でもぉ、期待はしないでねぇ。」
「期待しないでって言う人は上手な傾向にあるので期待します。」
「えっ、」
「サティ、大丈夫だよ。アヤネはああ言ってるけど、戦い始めたらちゃんとするから。」
ユアがサティにこっそり耳打ちする。
「そうなのねぇ。なら、私はアヤネに期待しようかなぁ。」
「アヤネ、めちゃくちゃ強いんで。」
「おい、そこ。何を話してる。」
2人が後ろでこそこそしているのに気が付いたアヤネは後ろを振り返ると教官風に言ってみた。
「はい、大佐。サティ殿にダンジョンで使えそうなアイテムがないかを確認していたところであります。」
アヤネのノリにしっかりと付いていくユアはアヤネの部下という設定で繋げた。
「なるほど、確かに必要になるかもしれない。よい働きだ。」
「ははっ。ありがたきお言葉。」
「それで、なにかある?」
始めるのがアヤネなら終わらすのもアヤネらしい。
「......え?あ、うーん、MPの最大値を20分間上げれるのとか、STRの最大値を上げれるのとか?」
自然すぎるのに普通じゃないやり取りとユアが咄嗟についた嘘に驚き、唖然としていたサティは話題を振られてまたも驚いて可愛い声を出してしまった。
アヤネはそれを聞くと目を瞑り、考える素振りを見せる。目を開けると
「私は使えないかな。使うとしたらMPの方だけだね。」
「そっかぁ。じゃあ、何も使えそうにないわぁ。ごめんねぇ。」
「STRの方は私が使えるよ。」
「そう?じゃあ、3つ渡しとくわねぇ。」
「ありがとうございます。」
「いいえ。」
「2人とも、着いたよ。」
3人の目の前には昨日まで無かった大きな木が根を伸ばし枝を伸ばしていた。
そこで1つ疑問が生まれた。
「「「これ(ぇ)、どこから入るの(ぉ)?」」」
そう、入り口が見当たらないのだ。木に穴が空いているわけでも、地下に階段が延びているわけでもない。ならば、転移か?と転移陣を探してもない。
ユアが木を一周すると、ユアは転移の光を纏ってどこかに転移した。
「「......え?」」
「ちょ、ユア?おーい、ユア~。」
「ユア~?ユアは何をしたのぉ?」
「ユアは.....一周してた。」
「私たちも一周してみるぅ?」
「そうだね。」
取り残されたアヤネとサティはユアと同じように木を一周すると同じように転移の光を体に纏わせて転移した。
◇◇◇
アヤネとサティが転移した先ではユアとゴリラのようなモンスターの戦闘が始まっていた。
「ユア!!ちょっと待っててね。サティ、弓!!」
「りょ、りょーかい。」
「【神速】」
アヤネのAGI値が3倍に跳ね上がる。その勢いでユアを
捕まえ、ボスに少しダメージを与えてサティのところに戻ってくる。
【神速】
レベル15で手に入れられる【加速】がレベル20で手に入れられる【超加速】に進化し、その【超加速】がレベル25までノーダメージでいることで進化したスキル。
効果はAGI値が3倍になる。持続時間は10秒。クールタイムは30分。
「アヤネ、今回もギリギリだね。」
「今回は本当にギリギリだった。」
アヤネの超スピードを見たサティは弓を引いたまま硬まってしまった。
「サティ?どうしたの?ボスの攻撃、来るよ?」
「え?あ、ああ。ごめんなさい。ちょっとびっくりしちゃってぇ。」
「そう、それなら大丈夫.....かな?」
「ええ、大丈夫よぉ。」
「よし、ユア行こう。」
「うん。」
「サティは適当に弓射ってて。」
「え、当たらないぃ?」
「「.....それくらいなら躱せる。」」
アヤネとユアはサティに振り向くと自信満々に告げた。
「そ、そう。じゃあ、普通に射るわよ?」
「良いよ。」
「良き良き。」
アヤネとユアばボスに向かって走り出す。ユアは左から、アヤネは右から、ボスに迫る。アヤネは走っている間に麻痺手裏剣と爆裂手裏剣を1つずつ取り出し、麻痺手裏剣からボスに投げる。それは見事に当たり、ボスの動きを止める。
「ユア、今!!」
「うん!!」
ユアはボスの下半身を中心に、アヤネは上半身を中心に攻撃をしていく。
「とりあえず、視力にサヨナラしよっか。」
しっかりと目を潰すことも忘れない。
下半身を攻撃しているユアが目を潰したアヤネを見て「うわあ」と呟いたこととサティが「ひぃっ、」と小さな悲鳴を上げたことをアヤネは知らない。
そうこうしていると麻痺の効果が切れ、動き始めた。
「置き土産ね。【水遁】」
アヤネは手に持っていた手裏剣をボスの頭に突き刺すと【水遁】でサティのところまで離れた。アヤネのスキルを1つも知らないサティは突然、現れたアヤネに当然、驚く。
「わっ!?......なんで?」
「私のスキル。逃げるスキルだよ。」
「そうなのねぇ。あの手裏剣といい、今のスキルといい、便利なスキルばっかりねぇ。」
「へへんっ。まあね。」
「アヤネ、そろそろキツいから戻ってきて。」
アヤネがサティに説明し終わると1人でボスに対抗しているユアがアヤネに助力を頼んだ。
「分かった、今行くね。サティさん、弓、じゃんじゃん射ってください。」
「分かってるわぁ。」
アヤネは次に煙玉をインベントリから取り出す。
【煙玉】
【忍具生成Ⅲ】になると作れるようになる。睡眠煙、麻痺煙、毒煙の3種類ある。生成時に必要なMPは25。
アヤネが持っているのは睡眠の効果を持ったものだ。
「ユア、離れて!!」
ユアは瞬時にボスから離れてアヤネに近付く。
「ちょっと眠っててね。」
アヤネは笑顔で言いながらボスに煙玉を投げつけた。
「ユア、どこがダメージ入りやすい?」
「わからない。けど脚はあんまりだと思う。」
「そっか。顔はやっぱり入るね。」
「【目潰し】があるからじゃない?」
「それもそうだね。」
「私は次、背中を狙うからアヤネはお腹をお願い。」
「ねえ、それって、危ない方じゃない?」
「アヤネの方が離脱力高いもん。」
「たしかに、そうだけど。」
「なら決まり。ボスも目が覚めたみたいだし。第2ラウンドだよ。」
「そうね。」
アヤネとユアは寝起きのボスを苛めに行った。
そして、アヤネとユアが情報を共有して、作戦を立てているところを寂しそうに眺めている人がいることには2人とも気付いていなかった。
「私ぃ、仲間外れぇ?」
後書き編集
いきなりレベル25とか出てきて混乱したかもしれませんが、2層追加の発表から追加されるまでは8日あるのでその間に上がったと思ってください。
【忍具生成】も同じです。
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