第7話 後編

 「レティ!みて、みて!

  レイちゃんが髪飾りをくれたの!」


 「• • • • • •」


 その名前を聞いた瞬間、思わず顔がこわばる。


 「レティ、そんな顔しないで」

 

 「仕方ないじゃない、、、嫌いなんだもの」


 「そんなこと言わないでよ。一回だけ一緒に遊びにいかない?」


 「 • • • • • • • 」


 「お姉ちゃん、お願い!だめ?」


 「だめ!」


 「お姉ちゃん、おねーがい!」


 「無理よ」


 「お姉ちゃん、本当に一回だけ!?ね?

やっぱりだめ?」


 と妹ものすごーく悲しそうな顔で問いかけてくる


「あーもうっ!わかったわよ!一回だけだからね?」


 「やったー!ありがとう!お姉ちゃん

  大好き!」

 と嬉しそうに抱きつかれる

 「はい、はい」

 いつものように受け流す


 「ねえレティ、そろそろ許してあげて?」


 「誰のこと?」とぼけて返す


「レイちゃんの事よ、あれから2年経ったよ?

見ての通り、あたしは元気だよ。傷跡も残ってないしだからさぁ、許してあげて?」


「 • • • • • • • • 」


「だめ?」


「エリーだけが仲良くしてあげたらいいじゃない、

 あなたの頼みでも嫌いなものは嫌いだよ」


「それはだめだよ、、、レティがあの子と仲良くしてくれないと、せっかく苦労したのに、無駄になっちゃう」

 

「うん?何が?」主語が分からず聞く。


「あっ!ごめん、ごめん、こっちの話だから

 レティは気にしないで」


「変な子ね。」

 

「それじゃあ、早速行きましょ!」


「え!?何処に?」


「もちろん!レイちゃんのところだよ」


「今から!?もう夕方よ?」


「何言ってるの?

 お姉ちゃんの魔法ならすぐでしょ?」

 

「それだったら、あなたもできるじゃない!?」


「あたしは苦手だから嫌だ」


「な、なによそれ!私だって苦手わよ!あれ使うと視界が歪んで、目が回って、気持ち悪いのよ!」


するとエリザベスは最強ワードを言い放つ。


「レティはお姉ちゃんでしょ?

  ねえ、お姉ちゃんだめ?」


「むむむっ、、、、、わかったわよ、私がすればいいんでしょ!ちくしょ!」


すると最近行き来慣れた屋敷と着いた。


(はあ、最っ悪、、、、気持ち悪い、、)


妙にくらくらして、ふらつくと腕を掴まれた。

 

「レティ、大丈夫?」

 

「問題ないわ。少しふらついただけよ」


「最近、魔力をよく使うから疲れたかもね」

呑気に言う妹を睨みつけた。


「だれのせいよ!」


「ふふっ、お姉ちゃんいつもありがとうね」


はあ、最近この子に振り回されてばかりだわ。


「お姉ちゃん!こっちきて」


急に引っ張られ、木の物陰に隠れる。


「一体どうしたのよ?」


「お姉ちゃん、しーっ」口を手で塞がれた。


隠れた直後、屋敷から人が出てきた。

信じられない光景が広がる。


「お、お姉様、、は、離してください、、

 い、痛いです。」


実の姉に髪の毛を引っ張られ、

屋敷の外へと引きずられていく、レイラの姿だった。


「黙りなさい!汚い口でお姉様と呼ぶな!

 お前を妹だなんて思ってないから!」

と怒鳴りながらレイラを地面へと突き放した。


「そろそろ消えてくれないかしら?目障りなのよ」


とさらにもう一人の姉が言う


「ごめんなさい、ごめんなさい、許してください!」

必死に土下座しながら謝るレイラ


「そのドレス、今すぐ脱ぎなさい!」


命令されるがままにレイラはドレスを脱いだ。

するとドレスで隠れていた、無数の傷があらわになる。

その光景を見て、レティシアは困惑した。

「こ、これはどういうこと?」エリザベスに聞く


「実はね、

  レイちゃんのお母様はここの使用人だったの」


 「えっ?」


「だからその人達には歓迎されてないのよ。男爵とレイラのお母様の歓迎がバレて、怒り狂った夫人がレイラのお母様を奴隷として売った、夫人はレイちゃんも売るつもりだったけど流石に男爵は反対したのよ。男爵の血を受け継いでるから売るわけにはいけなかったみたい。夫人は世間の目を気にして、まるで実の娘に振る舞ってるよ。でも、屋敷内では使用人同様の扱いを受けてるのよずっと。」


「そ、そんなの酷すぎるわ!男爵は何も言わないのよ」


「レティ、男爵は首謀者なんだよ。男爵こそがレイちゃんを誰よりも目障りと思ってるのよ。」


ある事が浮かんだ

「ずっと虐められてるってこと、まさか!?

 2年前の事ってあの子たちの仕業なの?」

 

「うん、そうだよ」


「知ってたのね。どうして黙ってたの?」


「レイちゃんは自分の事を世間に知られて欲しくないのよ」


「どうしてよ!」


「レティ、声抑えて、気付かれちゃうから」


「やっぱり理解できないわ。大人に相談すればいいじゃない?そうだわ!お父様なら何とかしてくれるよ。」

するとエリザベスは姉の肩を力強く掴んだ。


「レティ、いい!?お父様は今自分の仕事で手一杯なのよ。わかった?」とまるで言い聞かせるようにレティシアに言うと、更に肩に掴む力を強くする、レティシアは痛みで顔を歪ませて、涙目でエリザベスに訴える。

「っ!い、痛いわよ」


「痛くしてるからね、レティが馬鹿な事を言うから。

お父様には言わないで絶対でわかった?レティが言ったら絶交だから!」

と鋭く姉を睨みつけ、命令する。


「わ、わかったから離してよ、今のエリーは何だか怖いわ、、、。」


「レティの考えは甘いからよ、、、世間にバレたら

男爵はレイちゃんを自分の側から留める理由がなくなる。そしたら、男爵は迷いもなくレイちゃんを奴隷として売るよ。そうなるといくらお父様でも他の家の問題に首を突っ込めないのよ?」

更に淡々と語るエリザベスに

レティシアは何も言い返せなかった。


「だからね、今最善な方法でレイちゃんを助けてあげよう?」


「うん、、、、そうだね」

頷くといつもの優しい妹に戻っていた。


「レティ、いい子、いい子」

 と頭を撫でられた。


「むっ!、、、子供扱いしないでよ!」


「ふふ、怒った顔のレティも可愛い」


「と、とにかく!とりあえず帰るわよ」


それからというもの極力姉妹はレイラを屋敷へと毎日のように呼びつけた。

初めは今までレイラに行った行いがバレるのではないかと恐れてか屋敷への招待を硬く拒んだ。

だが、姉妹の父親は誰かとこんなにも遊びたいと思う相手が娘達にいなかったため、純粋に喜んでわざわざ赴き、男爵に頼み込んだのだ。だから流石の男爵も折れたであった。更に屋敷へのお泊まりも許可してくれるようになり、確認する限り、最近暴力を振われていないためか傷は見当たらなかった。

エリザベスの言う通りレイラはとても優しくて良い子だ。だから、すぐに友達として仲良くする事ができたのである。

あれから3年経った今ではレティシアはすっかり、レイラと親友としての関係となった。


レイラとの出会いを振り返って思わず

「懐かしいわね、、」と呟く


「何がですか?」


「ううん、何でもないわ。それより行くわよ!お腹空いたわ」


と聞くレイラにレティシアは笑顔で彼女の手を掴み学食へと引っ張ったのである。











 


 









 

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