第52話 MVP

「いけーーー!!チティリー」


友人とカフェに来ていたリーン・橘は、他の観客に混ざってモニターに声援を送っていた。


熱気が収まらない中、小休憩として2人でドリンクを取りに行く。


「弟君大活躍じゃない」


隣の友人もモニターに目を向けて楽しんでいるが、リーン・橘程ではなかった。


「まだまだ、調子出てくるのが遅い!」


グラスを一気に空にした。


──────────────────


予定の時間、5分を大きく過ぎて12分40秒の数字をタイマーが示していた。


課長からのメモには


・タイムは関係なし、どちらかが全滅するか、少しでもトットファーレが優勢になったら終了して


と書いてあった。


「ふぅ~、いやぁ白熱しちゃったねぇ」


ボーナスステージ終了の合図で、課長は操作から手を放して全身をストレッチし始めた。その顔はとてもやり切った顔だった。


宇宙空間では、課長ポッド群が急停止してその場で漂っていた。


トットファーレ側も1テンポ遅れて静まったが、状況が呑み込めないのか、周囲の状況を確認の為に動く者、その場で漂う者がいた。


勢いよく飛行していたイグニスが出力を下げて、旋回していた。


「どういう事ですか?」


「終わったって事だ」


チティリの問いにフォイドが答えた。


「終わり終わり、みんなお疲れ~」


崎・クワトロがあっけらかんと全員を労った。


「終わりっスか?やっと押し始めたと思った所で?」


ルート・ビアが周囲に何度も問いただして、ちょっとしたパニックを起こしていた。


「落ち着け、ルート。先入観や固定概念を持ち過ぎるなって何度か言われているだろう?スッキリしないのも分かるがな。ガハハハ」


「そういえば、ルート君はこういう事は初めてでしたね。これが課長節です」


アレーグ・クワーテとディフリーフォール・シーがルート・ビアを落ち着かせた。


「皆さんお疲れさまでした。白熱したレース&バトルでしたね。これより優勝チームを発表したいと思います。では、課長さんどうぞ」


テテルから課長にマイクが渡された。


「みんなお疲れ様~。中々良い動きをしている子達が多くなってきて嬉しい限りだよ。今回の事で改めて、常に世界は変わっていく事を意識して、これからの仕事に繋げてもらいたいかな」


課長は、テテルに進めてと合図を送る。


「それでは、結果発表にいきましょう、各レースのタイムと審議の結果を以って、No.2チームの優勝となりました、おめでとうございます。優勝チームにはオープンしたばかりのスイーツ店【甘美甘味】の一品無料券を50枚と、あのポエム集の最新版が副賞として送られます」


結果発表を聞いた誰もが、驚きもなく称賛をした。そして大多数がホッとしている様子が窺えた。


「しか~し、そんな分かり切った事でこのレースを収める訳にはいきません。今回のレースでひと際優秀な選手がいますのでその方に全部持っていってもらいましょうかこのドロボウさんめ」


テテルのセリフに安堵した空気が引き締まった。


「・・・俺っスかね?優秀は嬉しいっスけど、副賞はちょっと・・・」


ルート・ビアが不安げな声を出した。


「お前じゃないだろwみんな同じくらい活躍してるからな」


崎・クワトロが背もたれに寄り掛かりながら、いち観客として楽しんでいた。


「それでは、課長さんから発表をしてもらいましょう。今回のトットファーレ艦外活動部署による班対抗レース、MVPは?」


「みんな良く頑張ってくれた。さて、ドゥルドゥルドゥルドゥルドゥル~~~」


課長が自分でドラムロールを長々と続けている。


「~~~~~~~~じゃん、ヨン・ノレイ君で~す」


「・・・私!?」


「ヨン・ノレイ君は研修を経て実地作業数日という短期間で、みんなと同等以上の活躍を見せてくれた。最後まで残っていたのも実力を表しているよね。新人だからって言うのを差し引いても十分と判断したし、これからの期待も込めてって事でどうかな?みんな」


課長の話の間、ヨン・ノレイは驚き続けている中、課長の話に皆納得しているようで、大いにヨン・ノレイを称えた。


「それでは、ヨン・ノレイ選手。MVPおめでとうございます。賞品と副賞を贈呈しま~す」


ヨン・ノレイを称える称賛が、テテルの『副賞』の言葉を境に、より一層歓声が上がった。


「突如開催されたトットファーレ艦外活動部署による班対抗レースは如何でしたでしょうか?応援した選手は活躍しましたか?賭けはいかようでしたか?儲かりましたか?各々楽しんで頂けたかと思います。今回のレースは【怒っテル・泣いテル・楽しんデルch】にて配信させて頂きますので、高評価・チャンネル登録よろしくお願い致します。それではみなさん、お疲れさまでした~」

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