契約




「もういい。」


光がマスターメビウスと近衛府の間に割って入る。


両者は既にボロボロで、仮面も取れ、三と四は倒れ、辺りにはナイフや剣の破片が散乱し、


火炎で草は焼け、マスターメビウスは腕が一本無くなっている。


「はッ!もういいとな。」


マスターメビウスは驚いたように笑う。


「何のつもりだ貴様」


仮面が破壊され、素顔の壱。昂った怒りの表情が見える。


「いいんだ、もう。」


それを聞いて、マスターメビウスは一瞬で腕を戻し、くるくると光の周りを飛び始める。


「生き返らせなくて良いのか?」


「いい」


「もう会えなくなるぞ?」


「ああ」


「だがお前は契約書にサインをしただろう?一度結んだ契約は破棄出来ない。破棄不可だ。」


「いや、サインはしてない」


「何を・・・」


マスターメビウスが机の上の契約書を手に取る。


「サインする瞬間、お前の顔が吹っ飛ばされて、驚いてそのまま放置してたんだよ。」


マスターメビウスは、なにか、悔しそうな、微妙な顔をする。


「あーーーーーーーーー。」


気の抜けた声。


「なら一つ聞かせてくれ。なぜ心変わりした?なぜだ?知りたい。知りたいぞ。私は知りたい。」


再び光の周りをくるくる飛び回るマスターメビウス。


「諦めか?達観か?犠牲を出すのに耐えられなかったか?死を受容したのか?知りたい。私は知りたい。」


子供のように無邪気な表情で、好奇心で質問を繰り返す悪魔。


「答えてやる代わりに、一つ願いを叶えてほしい。」


光はゆっくりと、強い語気で答える。


「ほう!・・・いいだろう。私は知りたい。それほどに知りたいぞ。」


飛ぶのをやめて、地面に降りる。金の杖を付き、まっすぐ真正面に立ち、まっすぐに光の目を見る。


「願いは何だ?どんな願いでも一つ叶えてやろう。」


光は丘に座っているシを指さし、


「あの女の病気を治してくれ。」


「は!」


笑う悪魔。とても嬉しそうだ。


「そうか、そうだな。そうなるか。」


マスターメビウスが空中に指で何か、模様を描くと、遠くで姫が何かに掴まれたように持ち上がり、


フワフワと浮いて運ばれてくる。


姫が目の前までくると、ゆっくりと下ろされる。


「・・・何か用?」


姫がきょとんとしながらマスターメビウスに聞く。


ドスッ


「なっ・・・!!」


マスターメビウスが、突然、姫の胸を腕で貫いた。



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