戦い
深く息を吸い、少しでも回復するために。
時間稼ぎのために質問を投げかける。
「お前は誰だ」
「・・・」
答えない。おそらく、姫を取り戻しに来た警察か軍人だろう。
しかし、なぜ一人なんだ?なぜ仲間がいない?
体の痛みはまだあるが、やるしかない。
構える。
男は両手を下げたまま、棒立ちだ。
今、時間をかけると、仲間がやってくるかもしれない。
こちらから仕掛けるしかない。
左の手刀の突きで相手の目を狙う。
指を突きさす目突きではなく、目を瞑らせることが目的の突きだから、目に当たらなくても良い。
掠るだけで効果が出るから無駄な力みも必要ない。そして手刀は拳よりも届く距離が長い。
俺の師匠に教わった技だ。喧嘩には非常に有効で、実戦で何度も効果を発揮してきた。
ガードされても、かわされても、姿勢を崩したところを右で追撃する。
だが、俺は吹っ飛んでいた。
胸に強い衝撃。金属のハンマーでぶん殴られたような、人間の殴り合いではあり得ない衝撃。
「がはっ・・・」
地面で3度ほど回転して転がる。
衝撃で呼吸ができない。
痛み、恐怖、ショック、いやそれよりも、こんな人間がいるのか・・・?
そりゃ俺より強い人間はいるだろう。別に俺は世界チャンピオンじゃねぇ。
にしても、だ。
「お・・・お前は何なんだ・・・」
「まったく、姫を誘拐したと聞いて、どんな奴かと思えば、弱い。」
俺は必死に立ち上がり、呼吸を整える。
強い。こんな強い男は初めてだ。
藪をつついて蛇を出すというが、龍が出てくるとは思わなかった。
ビッと男が地面を蹴り、間合いを詰める。
「うおっ」
次に吹っ飛んだのは男の方だった。
俺は男の右拳の突きを捕まえ、背負い投げを決めたのだ。
「そんな舐めた攻撃通るほど俺は弱くないぞ」
男は完全に油断していた。明らかに雑な攻撃を仕掛けたのだ。
「やるではないか。」
男が構える。腰を深く落とし、半身になる。
コイツは不味い。油断した隙を突いたは良いが、一撃で倒せるほど甘くはない。
むしろ本気にさせてしまった事でさらなる危機に追い込まれている。
「ではこれを捌けるか?」
突きの連続攻撃、こいつは遊んでいるんだろうが、こっちにとっては一発一発が致死性の攻撃、
ガードしてもその上から衝撃で内臓が揺さぶられる。
「もう少し遊ぶか」
片手を背中に隠し、片手で勝負するというのだ。
流石に頭に来るが、実際、それほどの実力差がある。
ゴッ
乾いた鈍い音が空間に響く。
男はそのまま倒れる。
「はぁ・・・はぁ・・・痛いわ!!」
姫だ。
姫が壊れたバイクのフレームで、後ろから思いっきり頭を殴ったのだ。
あまりの予想しなかった展開に、開いた口が塞がらない。
「さぁ、行きましょう。」
唖然とする俺を置いて、先に歩いていく姫。
俺はまだ動くことができない。
なんなんだこの女は。
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