壊せ!



「とても、単純な理由です。私は諦められているのです。そこに金を掛ける理由がない。」


「見捨てられているのか」


「まぁ、私が死ねば、悲劇の王族として、大々的に宣伝して、同情で支持率を取るのでしょう。」


「ひでぇ話だ」


「王族とはそういうものですよ。自己の存在を維持するためにはすべてを使う。生物なら当然の選択です。そして、そのために犠牲になることも、王族なら当然の責務です。」


この女も、その一員らしく、その言葉に澱みは無い。まっすぐとこれが正しい論理だと信じている声だ。


その圧に押されたのか、俺は一歩後ずさる。そのはずみで、飾ってあったハニワのような石像を倒してしまった。


「おあっ」


反射的に手を伸ばし、受け止めようとするが、間に合わず落としてしまう。


土塊(つちくれ)から出来た石像が、土塊に戻ってしまった。粉々に割れて。


「・・・」


「・・・」


思わず女と目を合わせてしまう。


「一応言っておきますが、ここにあるものは本物です」


「おぉ・・・う・・・」


もちろん、俺は犯罪者で、姫を誘拐して命を奪う大悪人だが、別にやる気も無かった罪を犯してしまい、

動揺が声に出てしまっている。


完全に停止している俺を尻目に、女は立ち上がり、その近くにあった白磁の壺を手に取り、


カシャン


投げ割った。


「おい、何を」


姫は子供のような笑顔で、こちらに微笑み、次々と美術品を破壊し始めた。


トロフィーのような彫刻を持ち、それをバットのように振り回して。


俺はそれをただ口を開けて呆然と眺める事しかできなかった。


「んんぬぐ~」


2mはある銅像を倒そうとするが、ビクともしない。


俺が後ろから押してやる。銅像は倒れ、壁に当たり、上半身がぐんにゃりと折れてしまった。


「・・・あはっあははははははははは!!!!!!!」


かんらかんらと笑う姫。


「・・・はっ」


思わず、つられて俺も笑ってしまう。


その後。理由はない。理屈も無い。ただ、宝物庫にあったものすべてをぶっ壊し、


俺たちは城を後にした。

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