エレベーターでの会話
階段を降りると扉がある。
「開けてくださいます?」
「鍵があるだろう」
「ああ、あれは見た目だけですよ」
確かに、押せば開いた。
塔を出ると、まだ夜中だった。3時・・・4時ぐらいか?
前を歩いていた女が、突然止まり、振り向いて言った。
「貴方に私の命を差し上げる代わりに、一つお願いがあります」
「なんだ」
「わたくしの城に、ある宝石があります。それを持っていきたいのです」
「そうか」
「それと、疲れました。城まで運んでください」
「わかった」
女を背に乗せ、ほんの少しの距離を歩き出す。重い。俺が血を流して疲れているからなのか、重く感じる。
城につくと、消防員は既に帰っており、数人の警備兵が居るだけだった。
女を降ろし、女は警備兵に話しかける。
「これは姫様、なにか?」
「ボヤ騒ぎがあると聞きました」
「発煙筒です。何者かのいたずらか、まだ不明です」
「宝物庫は確認しましたか?」
「1階の宝物庫は確認しました。確認済みです。」
「地下宝物庫はまだでしょう。鍵は王族しか持っていませんので」
「はい、そのとおりです。」
「では私が確認して見ましょう。私なら開けられます」
「しかし、何もこんな時間に」
「王からの直々の命令なのです。今すぐ確認してこいと、」
一瞬兵たちの顔色が変わる。
「わかりました、お供します」
「結構です。私とこの従者だけで十分です」
急に姫様に使える召使になってしまった。
それらしく、うやうやしく、頭を下げる。
「では、よろしくお願いします」
兵が敬礼をする。
俺は姫様を再び背に乗せ、城に入っていく。
城の中は、簡素なものだった。カーペットもなく、証明も安っぽい電灯。壁もヒビが入っている。しかし、なにか違和感がある。
正面廊下をまっすぐ歩いて右に曲がると、エレベーターがある。なんだこのチグハグさは。
姫様を背から降ろす。
「では参りましょう」
扉を開けエレベーターに乗る。思ったよりも広い。そして新しいモノだ。
姫様が押したボタンは、7つ。何らかのパスワードを入力しているようだった。
エレベーターが音もなく動き出す。
「うおっ」
エレベーターってのは基本的に下か上に動くが、体にかかる慣性から考えて、明らかに横に移動している。
思って見もなかった動きに、バランスを崩す。
「あなた。名前は?」
突然の質問にぎょっとする。
この女は、空気を読まない。それに引きずり込まれていく。
「光(ひかる)・・・だ」
目を合わせず、エレベーターの壁を見ながら答える。
「私の名前はシです」
思わず女の顔を見てしまう。
「し?」
「シです。紫なのか四なのか糸なのかわかりませんが」
「名字は?」
「ありません。シだけです。」
「王族ってのはそれが普通なのか?」
「幼名では普通です。成人した時に正式な名前、名字が与えられるのです」
「そうか・・・」
エレベーターはまだ止まらない。
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