第9話 夜2
あれはもう何年も前の記憶。その夏は特に暑かった。エアコンで十分に涼しい部屋。私はそのころ、夕汰と二人でリビングに布団を敷いて寝ていた。夕汰は下着1枚、上半身は裸で眠っている。生まれたばかりのときに、10分置きに泣きわめいて夫婦を困らせた彼は、その反動から?か、とてもよく眠る。11歳になる夕汰。ひょうきんで、お調子者。私に叱られると、まだ泣いてしまう。時折、小憎らしいことを言う。私もかつてそうだった?(父もかつてそうだった?)
代わって、どんどん可愛らしくなる妹の結衣。元気で食いしん坊だが、ふと物思いにふけるくせがある。私の気のせいかもしれない。細身で、足も長く、小顔。一重の薄い顔立ちだが、髪が伸びれば伸びるほど、美しさも感じられる。彼女は妻の葉子とともに、寝室で寝息を立てている。葉子は?葉子の考えていることが全くわからない。もしかしたら、出会った頃からずっと、私は彼女が全然わからない。永遠の謎かもしれない。いつか、謎が少しでも解ける日がくるのだろうか。ぼんやり、眠れない夜に考える。
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