未来から来た本当の理由

 自室からリビングへ移動してきた僕は、自分で入れたお茶を目の前においてテーブルに座り、クアンタムの話を聞くことにした。



(…で?未来から来た本当の理由は日本を救うなんてことじゃないんだろう?)


〖いえ、それは違います…ただ、命令を遂行していくと結果的に日本も救うことになるってだけで…〗


(あのね…目的がそうなるように行動するんじゃなくて、結果的にそうなるっていうのはえらい違いなんだけど?)


〖まぁ…そうとも…言うかもしれませんが……〗


(……とにかく、しっかり一から十まで過去に来た目的話してよ、初めの頃みたいにかっこつけてないでさ…言っとくけど、僕の中の君のイメージはこんな感じだからね)



 僕は頭の中にテレビの前にコタツがある部屋でスウェットを着て炬燵に寝そべって入りながらせんべいをかじってゲームをするクアンタムを思い描いた。



〖ちょっとオーナー!!!なんなんですかこの酷いイメージは!!訂正を要求します!!!私は未来の超高性能AIなんですよ!?〗


「この一週間の君の行動をよーく思い返してごらんなさい。」


〖ぐぬぬぬぬぅ……〗



思わず声が出てしまった僕だったが、幸い今はだれもこの家にはいなかったからよかった……僕のほうも練習が必要だな……



〖分かりましたよ……えーと、私の過去に来た目的でしたね、簡単に言うと日本を救うというより日本の景気を回復させて来いという命令でした〗


(なにそれ?日本の景気とクアンタムが作られたのって関係あるの?)


〖え~まず経緯から説明しますと、私を作り出した天才科学者の創造主マスターである【玲慈奈れじな・ヴァンガード】、彼女が8歳の頃とある事件が起こります〗


(天才…まあ一応凄いAIだしそれもそうか…その事件ていうのは?ご両親が事故で亡くなったとか?)


〖いえ、ただ単におこづかいを減らされただけです〗


「しょうもな!えっ?なにっ?その人おこづかい減らされてAIとか作ったの!?」


〖要因は複数あります、マスターが御父上のキャッシュカードクラッキングして発明器具を購入したり、御母上の愛用している化粧品の成分分析をして効き目がないと開発会社に複数アカウントで抗議メールを送ったと同時に週刊誌に成分データの結果を送ったりといったことが重なった結果ですね〗


「全部自業自得だよ!なにその人!めちゃくちゃじゃないか!?」


〖とにかく、天才でおバカなマスターは考えました、おこづかいが減ったのなら元の金額を増やしておけばいいのでは?と〗


「こ……行動力あるおバカ…いやいや、それでなんで過去にAIを送るって発想になるのさ!?」


 そもそもこんな技術発明できるなら未来世界で大金持ちになっててもおかしくないだろう!?


〖まあオーナーのその考えは至極正しいものです、しかし悲しいかな…マスターは天才で顔も体も極上でしたが、なまじ頭が良すぎたため幼少期の体験から人間関係構築が苦手となりメンタルよわよわ美人となってしまったのと、自分に原因があるとは考えず周りに原因があるという思考の持ち主だったことが私がここにいることの原因ですね〗


「きっかけも開発理由もひどすぎる……で、結局どうしてそれが日本の景気回復をすることになるの?」


〖それは簡単です、未来の自分がおこづかいが少ない→今の日本は不景気→今から対策しても手遅れ→じゃあ過去の日本で何とかして景気回復させる→未来の自分のおこづかいアップ!……以上のような発想で現在の事態になっています、よかったですねオーナー常日頃から想像していた非日常の世界がやってきましたよ〗


「こんなしょーもない理由の非日常はいらないよ…」



もっとこう…あるでしょ…転移したとか転生したとか宇宙から宇宙人が来てとかさぁ…



〖しかしご安心あれ!このスーパーAIクアンタム・パラゴン!サクッと景気回復できる秘策があります!〗


(ふ~ん、遊んでた時に思い付いた作戦だったらろくな事じゃなさそうだけど、どうやるの?)



 僕は飲み干したお茶を入れなおすべく、急須に茶葉を入れなおした…今度はほうじ茶にしよ。



〖要は世の中がお金使っていいんだ的な空気になればいいんですよ、日本の高度経済成長期からバブル期なんてそういった雰囲気で動いてたようなもんですからね〗


「暴論だなぁ…まあでも一理はあるかな?…ズズズッ」


〖なので、とりあえず日本の大手メインバンクのサーバーに侵入して適当な人たちの口座残高の桁にゼロを五つほど足しておきました〗


「ブッフゥゥーーーー!!ゲホッ!ゴホッ!ちょっと待て!それって犯罪だろ!駄目じゃないか!」



 とんでもない報告を聞いたおかげでテーブルに向って勢いよくお茶を吹き出してしまった…滅茶苦茶なことしやがった!このポンコツAIは!



〖ちょっとオーナー、汚いですしお茶もったいないですよ?〗


「そんなこと気にしてる場合か!何考えてるんだお前は!」


〖そんなこととは心外ですね…ああご安心ください、外国籍者やヤクザ、カルト宗教等反社会的勢力と呼ばれる関係者のはいじっておりませんので、正真正銘善良な一般日本国民ですよ〗


「あのねぇ…………ん~?……まあ、数日様子見てみるか…」



 本人(AI)が言ってるんだから間違いないんだろうし…これに懲りたらまっとうな手段を考える手伝いをしてやろう。



〖お~っほっほっほっほっほ!もはやマスターからの命令は達成したも同然!三日後には好景気に沸く日本国民がワイドショーのトップを飾ることでしょう!この戦い勝ったな!さすがは生体マイクロ量子PC搭載スーパーAIクアンタム・パラゴン!ああ!この名前がオーナーのみにしか知られることがないとはいえ実にもったいない!いや!好景気に沸いたらその隙を見計らい日本政府や各機関のHPホームページに我が名を刻んでやりましょう!〗


「まあ頑張ってね、僕もある意味楽しみにしているよ…」








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