雨が降ってきたら

雨が降ってきたら、雨の音と匂いを感じることが出来る。そんなことより私の背中には濡らしたくない単行本が入ったリュック。ときどき気を配っては、ハンカチで申し訳程度に表面を拭って、また歩く。めんどくせえ。嫌だ。雨の音と匂いはすっかり忘れられて、ひっそりと主張する。ようやく家に着いて、ベッドに腰掛ける。窓の外から主張が届いて、私はそちらへ目を向ける。なんだかいい気持ちになる。


嫌な部分と、好きな部分がある。嫌な部分の方が、大いに目立つ。雨は濡れるから嫌だ。でも、楽しめないものでも無い。楽しめるはずのものなのに、雨が降ってきた時の感情は「嫌だ。」


一つの「嫌だ。」が人を遠ざける。「嫌だ。」には、「好き」よりも強いエネルギーがあると思う。

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