第12話 緩やかな時間
「あぁ、疲れた」
「優しいお母様だったね」
「まあな」
「ちょっと緊張しちゃった」
「ちょっとどころじゃないだろ」
母さんに美緒の紹介を終え、正式に同棲の許可が下りた。
まあ、その辺は割と心配していなかったらしい。
莉緒さんと何度か話していたらしく、家族公認の仲となっていた。
「ねぇダーリン」
「んぁ?」
「はむっ」
「っ…。ああ吸血ね。そういえばあっちで出来てなかったな」
お昼は丸々実家で過ごしたため、美緒の吸血が出来ていなかった。
というか前に吸血は最低限で良いって言ってたよな…?
「ぷはっ、ごちそうさま」
「はいはい」
「ダーリン」
「どうした?」
「好き」
「そう」
「ダーリンは?」
「好きだよ」
「えへへ」
こんなデレデレできるのは羨ましいな。
「そういえばダーリンって誕生日いつなの?」
「急だな。まあ2月29日だけど」
「珍しいね」
「まあな」
「29日って事は前日に祝ってるの?それとも翌日」
「んー、翌日の事が多いかな」
「そうなんだね」
「ああ」
珍しい誕生日だろうが、俺はあんまり気にしていない。
俺の誕生を祝ってくれる人がいるのなら別にいつだっていい。
「美緒の誕生日はいつなんだ?」
「12月31日」
「年末じゃねぇか」
「そうだね」
2人揃って誕生日はまだ先か…。
誕プレとか何が良いのかなぁ。
「ダーリンから貰ったものならなんでも良いよ」
「当たり前のように俺の思考を読まないでね?」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ダーリン、課題は終わった?」
「終わったよ」
「早いね」
「授業中終わらせた」
「それは課題として正しいの?」
「できる時にやるのが課題だと俺は思う」
「そうなんだ…」
授業中に課題の範囲を言う方が悪い。
そんなことされたら、休み中にやらずとも終わらせれば良いよとしか俺には聞こえない。
「美緒は終わったのか?」
「今からしようかなって思って」
「それなら邪魔できないな」
「気にしないで良いよ。私の見えるとこにいて欲しいな」
「分かったよ」
美緒は机に勉強道具を広げる。
俺はその横で漫画を読んでいた。
バトル漫画の世界に憧れはあるが、死と隣り合わせはごめんだ。
それにしても、美緒って横から見るとほんと美人だな…。
話してみると可愛いって印象が強いが、静かにしていると美しいの一言だ。
「あの、ダーリン」
「ん?」
「そこまで言われると流石に照れる…」
「ごめん」
「謝らないで良いよ。嬉しいから」
「それなら良かった」
再び静かな時間が流れる。
夕食の準備でもしてやろうかと思うが、それは美緒が許してくれないだろう。
家事をなるべく俺にさせたくないらしい。
ヒモ感半端ねえな…。
「なぁ美緒」
「どうしたの?」
「集中してるとか悪いんだが、血を吸ってくれないか?」
「えっ?」
「あーいや、悪い。気にしないで」
「はむっ」
「っ…」
美緒は首筋に噛み付く。
心なしかいつもより強い気がする。
「ぷはぁ、ダーリンから言ってくれるの久しぶりだね」
「俺から言ったことあったっけ?」
「あら忘れたの?告白した時にあなたが吸っていいって言ったじゃない」
「あったなぁ」
「もっと吸うね」
「好きにしろ」
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