第8話

 「は……はい…」


 ばばがよわよわしく返事をする。ばば?やり方分かるのか?いや、でもカメの甲羅で占いをしてるところなんて見たことないが……。


 「俺たちは、この海に生かしてもらってる、だから人生はこの海の状況次第って感じなのよ、分かるだろ?一度大雨が降れば海は荒れ、俺たちに牙をむくわけだ…ってわけでよ、これからの天気について占ってほしいんだわ」


 これからの天気について占え……。ばばは良く天気占いをしていた。日照りがどうとかで田んぼには欠かせなかったからだ。だが、ばばはたぶんカメの甲羅で占いなんてできない。


 なぜ……はいと言ったんだ?実はできるのか…?どこでそんな技能を身に着けてきたんだ?


 ばば……?


 「よぉし、焼け」


 違う男が何かを両手に持って、地面の火であぶる。火がゆらゆらと蠢いて、でこぼこした壁にぐねぐねと黒い影が蠢いている。


 あぶってるのはカメの甲羅か。


 占いをするのか?カメの甲羅で……?どうやって?


 「カメの甲羅を使った占いなんてばばがやってるの見たことあるか?」


 あむんこが静かに首を振る。


 やはり、そうだ。


 「よし、見ろ」


 カメの甲羅が火からあげられ、ばばに手渡される。


 じっくりとばばが甲羅を見つめている。すごく真剣な表情で見つめている。火に砂がかけられて、消され、ばばも男もただの黒い影になる。


 「…どうだ?ババァ…」


 ………


 影がばばの影の顔を覗き込んでいる。


 「その前に……もし、占いが当たったら……私たちを解放してくれませんか?」


 え


 「はぁ…?何を言ってるんだ?するわけねぇだろ」


 「占いとはこの地の神の意思を聞くことに他ならない、それは神聖な儀式であって……対等な立場じゃなければいけません」


 ばば…何を言ってるんだ?


 「……なるほど?」


 「なので、このように強制することじゃなく……何か占いに対する対価が必要になります……」


 なんだそれ。ばばはさんざん、村で特にあれをくれこれをくれと言わずに占ってきていた。全くのでまかせだ。


 もしかして、俺たちを解放するために…占いを?



 「ふーン……そういえば、死んだ巫女もおんなじようなことを言ってたな、あいつはただ人より多く飯を恵んでほしかっただけだと思ってたが……分かった、信じようか?お前の言葉、ただもし外したら……この話は無しだ俺たちの好きにさせてもらう、良いな?」


 結果次第で俺たちは解放される?ここから脱出することができる?生きたまま?早く出たい!この不快な空間から!叶うなら!ばばが救い出してくれる!


 「分かりました…」


 ………


 「今日、明日は雨が降ります……大雨が降ります…漁はやめたほうがよろしい」


 雨が降る……。空が少しくらい。今、いつ頃かは分からない。だが、これは夜の暗さじゃない気がする。


 雨が降れば……俺たちの身が解放される……。今日、明日。


 「よし、ばばぁ、今日、明日だな、お前の言葉信じるぜ、なんたって巫女だからな」


 ばばが後ろを向かせられて、縛られる。


 雨さえ降れば……。


 自由になれる……。


 頼む……雨…降ってくれ。


 ばばがこちらに連れてこられ、牢の前に座らされ、後ろ手を縄で格子とつなげられる。


 「よぉし!お前ら、引っ込むぞ!今日、明日は雨だぁ!漁はねぇよ!!」


 男の声が洞窟にこだまする。


 「ばば…ばば……」


 ばばに近づき、小声で話しかける。


 「甲羅で占いなんてできたの…?」


 「あんりゃ…できるわけないよ、知らないもんそんなん、でまかせに決まってるでしょ」


 やっぱりそうか……だとすれば、ばばは俺たちを助けるために占いを買って出たってことになる。


 「…じゃあ、あの占いは嘘なの……?」


 雨が降るかどうか当てなければしょうがない。

 

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