青海波
「どうした」
舞を
木も草も枯れ果てた
「
定省は走り出た。
定省を引き留めようと、伸ばした貫之の手は届かない。
定省は、
「風邪は静まったのか。よかった」
「お待ちください」
貫之は定省を抱えるように、御簾の内に引き戻す。定省を抱えたまま、善道に言う。
「善道も出るな」
「
「赤斑瘡……」
貫之に聞き返されて、善道は「風邪」と
善道は慌てて、
「もう治ったんだね、章成。よかった」
「舞を合わせよう、章成」
貫之に抱えられた定省は御簾の内から身を乗り出して、章成へと言う。
「御簾の内に居てください」
貫之は定省を引き戻す。
掲げられた
それを知らなくても、
紀望行の
「
章成が言った。
定省は悲しむ。
「君が、そんな心持ちになるのも、
「出てはいけません」
章成の方へ、御簾の内から出て行こうとする定省を、貫之は抱えて引き留める。
定省は、貫之の腕を振り解こうと、あがく。
「でも、だから、君の
「
章成は
章成の手は、力を込めたとも見えないのに、貫之の腕の中から定省は引き剥がされた。
引き出した定省を、章成は
「お前がいなければ、
人の皮を被っていたものが、
それを「鬼」と呼ぶ。
「章成っ、何をしてるっ」
善道は御簾の内から走り出て、
けれど、鬼の指は
「やめろ、章成っ」
善道は鬼の腕を掴もうとしても掴めず、ただ
「こんなことしたって、
紀貫之は御簾の内、立ち尽くしている。
「
雲の
乙女の姿 しばし
天の風よ 雲の通り道を 吹き閉じておくれ
天女の姿を この地に もう少し
崩れ落ち、咳き込む定省を、善道は覆うように抱える。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます