第七話⑴

 七


 事件は解決した、のか? いや解決したのだ。

 俺は別室に男を連れ込んで激しく問い詰めたのだが、最初は重い口を閉ざしたままだった。だが、俺が(ブラフではあったのだが)、鍵を盗んだお前の顔を見たと詰め寄り、さらに、神希が男に、あなたがそういう状態でいるのが何よりの証拠と追い詰めると、男は観念したように犯行を自供した。

 男の名前は、北野保夫。35歳のフリーター。「ネバーランド ガールズ」の熱狂的ファンだった北野は、エキストラに選ばれたことで盗撮の絶好のチャンスだと考え、密かにカメラを持参した。そのカメラを仕掛けるきっかけをうかがっていたところ、堺が俺に玄関の鍵を手渡した場面を目撃したので、これ幸いと俺から鍵をまんまと盗みだして犯行に及んだのだ(のちに、警察から提供された情報によると、北野には前科があり窃盗の常習犯とのことだった。これものちに分かったことだが、北野はこの別荘の管理人の甥であり、その立場を利用して後日、盗撮カメラを回収しようと目論んでいたのだった。ただし、あらかじめロケの場所が知らされているわけではなかったので、事前にカメラを仕掛けることはできなかったのである)。

 支配人と堺が北野を拘束して、身柄を交番に引き渡しに向かった。その間に撮影は再開され、神希の出演シーンを撮り終えたところで、俺は神希を別室に連れ出した。

 俺は神希の大好物である抹茶チョコを献上し、神希のご機嫌を窺がった。至福の笑みを受かべながら食べ終えた頃を見計らって、俺はさっそく切り出した。

「いったい、これはどういうことなんだ? 俺にはなにがなんだがさっぱりわからん。最初から説明してくれ」

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