第四話
四
女性アイドルグループ「ネバーランド ガールズ」は、東京都台東区の東部、観光スポットとして日本人のみならず種々雑多な外国人も訪れる浅草に専用劇場を構えている。桜橋から北に五百メートルほど進んだ隅田川沿いに位置し、野球場に隣接していた。
この「ネバーランド ガールズ」劇場では、グループで行う劇場公演の他に、定期的にメンバー一人によるイベントが行われている。ここでは、それぞれのメンバーが考案したアイデアを基に、毎回趣向を凝らしたプログラムが進行されている。
もちろん歌あり、ダンスあり、ひとり芝居あり。また、外国語や料理、イラストや書道など自分の特技の披露もあり。はたまた、お笑い芸人に対抗して、一人コントを演じるメンバーも。
メンバー個人の特性を生かした演出が見どころで、ともすれば集団に埋没してしまいがちなメンバーの個性をじっくり堪能できるのがいいと、ファンの間でも好評を博している。
また、このイベントでは、出演者を開演まで明かさないことが、ひとつのウリにもなっている。自分が応援しているメンバーが出演すればラッキー、そうでなくても、自分がそれまであまり気にも留めていなかったメンバーの新たな魅力を発見できるということで、ファンにとって刺激的なイベントとなっている。
そもそもアイドルファンは、特定のメンバーだけではなく、いわゆる「箱推し」と呼ばれるグループ全体を応援する者たちが大半である。
よって、他のメンバーのキャラクターや曲ごとの立ち位置も熟知している。
曲中の合いの手や振り付けを完全にマスターしているのも、ごくごく普通のことであった。
さらに、これらのイベントに際しては、チケットの割引サービスが設けられており、本日は十月の最終週でハロウィンが間近ということもあり、コスプレで来場した場合は、チケット代が半額になるのであった。
そして、今回の出演メンバーは、神希成魅。
大仏のマスクをかぶった姿での一人コントで、そのパフォーマンスは幕を開けたのだった。
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