第5話 自由都市フリダムダ

「…やっと着きましたね」


 幾つもの夜と、幾つものセクスのセクハラを躱しつつ、ようやく三人はたどり着いた。


「おお~…ここが自由都市か…」


 ――この世界の大陸のちょうど中心、一つの大型都市と数個の町や村からなる独立都市国家群を総して自由都市と呼ばれている。それぞれに特色や文化があり、多様な人種が自由な生活を送っている。セクス達はヒュトレイアス王の言葉通りに自由都市の首都とも言えるフリダムダを訪れていた。


「え~と、それじゃまずは冒険者ギルドの本部ですね。そこで魔王の情報を…」


「…いや、違うな。間違っているぞ、ココット・アルコット!!」


セクスはビシッと人差し指をココットの鼻先に指す。


「え、ええっ!?」


「そんな事よりも、何よりも先んじてやらねばならない事がある。それは…」


「そ、それは…?」ゴクリ…


「カジノだ!!」ババーン!!


「は?」


「お前もあのおっさん(王)が寄越した金を見ただろ。あんなガキの小遣い程度の

 はした金ではキャバでオールも出来ん。ここは一発当てて、シャンペンタワー

 乱立まつりをするんじゃあ!!」


 セクスは歓楽街を目指して猛ダッシュで駆けていく。一間置いてハッとしたリタとココットもセクスを追いかけた。


「待って下さぁ~い、セクス様~!!」


「ちょっと待ちなさいって! フラグがビンビンなんだけど! 数時間後、身ぐるみ

 剥がされて仲良くクシャミしてる姿が鮮明に見えるんでけど!?」


「今日の運勢は1位だった(気がする)!! 大船に乗ったつもりで俺に付いてこ~

 い!!」


◆◆◆◆


――そして数時間後、カジノ前…。


「くっ…何であそこで俺は台を変えてしまったんだ!! もう一回、まわしていれ 

 ば当たっていたなんて…!! 後から来たじじいに全部持っていかれちまっ 

 たじゃねーか!!」


「最後の直線で3番が失速しなければ大穴だったのに…申し訳ありません、

 セクス様・・・くっ」


「くっ…じゃねーよ、あんたら!! ほら言わんこっちゃっない。どうするんです

 か、泥船でしたよ! スッカラカンですよ! これじゃ今日の夕食どころか宿に

 も泊まれないんですけど!!」


「フン、心配ない。まだお前のお腰に付けたヘソクリがあるではないか」ニチャア・・・


「何で知ってんの!?」ガビーン!!


 ワアアアア!! その時、大きな歓声がセクスの耳に入った。その方向に目をやると、そこには円形状の巨大な建物が建っていた。


「何だこれは?」


「待って下さい、聞いてみます。…すみません。あの建物は何ですかぁ?」


リタが丁度通りかかったおっさんに話しかける。


「ん? ああ…あれは「闘技場」だよ。腕に覚えのある奴らが日夜戦いが繰り広げ

 てるんだ。賭けも出来て連日大盛況だよ。……それよりお嬢ちゃん、可愛いね。

 どう? 今からおじさんと宿にグフフ…ブベッ!!」


セクスのパンチでおっさんはふっ飛んだ。


「ふむ、闘技場か。…フフン、いいことを思いついたぞ」ニヤリ


◆◆◆◆


――闘技場内。


「で、イイコトってどういうことですか?」


「このゲームには必勝法がある」


そう言ってセクスは闘技場の闘士にエントリー用紙をココットに突き付けた。


「それは俺自身が闘士になることだ。そしてお前らは俺に賭ける。 そうすれば一気

 に大金ガッポリGETだぜ」


「え~?…そう上手くいくんですかぁ?」


「は? 俺が負けるわけないだろ。揉まれたいのか? というか揉ませろ」


「当然です! セクス様に全財産ブッパですぅ!!」フンス


「…リタちゃん、さすがに今日の宿代くらいは残してね? あとそれ私のヘソクリだ

 からね。返してね?」


 ――それからセクスは受付を済ませて、闘技場地下にある闘士の男性専用棟に移動した。専用棟は中央に広場があり、そこから放射線状に個人の控え室が並ぶ構造になっている。広場には目が血走っていたり、ブツブツ独り言を言っていたり、殺気立った連中が屯していた。


「チッ…むさ苦しい場所だ。萎える」


 通された部屋の簡素なベッドに腰を下ろしたセクスは、渡された闘技場のルールに目を通す。


 トーナメントは5人勝ち抜きで優勝。反則はなし。武器も魔法も自由。相手を殺すか、無力化させれば勝ち。ギブアップでも可。優勝者には金貨10000枚と副賞としてチャンピオンへの挑戦権が贈られる。


「ほう、チャンピオンとやらには興味がないが、金貨10000枚か。こりゃ俄然優勝し

 なきゃな。」


「――こ、困ります! は、離してください!」


 表で女の子の声がした。何事だとセクスが部屋から顔を出すと、向かいの部屋の前で、男がみすぼらしい恰好した女の子の手を掴んで引き入れようとしていた。


「わ、私はただ部屋のお掃除をしに来ただけで…」


「ぐへへ。いいじゃねーか、ゴブリ族のねーちゃんよぉ。俺の相手しろよ。試合前で

 昂ってんだ。どうせお前アレだろ? ここの奴隷だろ? 他の奴等も相手してんだ

 ろ? なぁ!?」


「そ、そんな…」


 ゴブリ族。住み低身長で薄緑色の肌をもち、森や洞窟で原始的な暮らしをしている

種族である。基本大人しいのだが、力が弱く、頭も良くないので他の連中に下っ端

にされたり、騙されて奴隷に堕とされたりする。


(ゴブリ族って割りには身長もあるし、発育もいい。もしかして混血か? ふむ……

 よし)

 

セクスは揉めている二人の傍へズンズンと歩いて行くと、男の方を蹴り飛ばした。


「がはぁ?!」


男は吹っ飛び壁に激突して気を失った。


「えっ!?」


「フン、邪魔なんだよ」


突然のことで驚いているゴブリ族の女の子の腕を掴んで、セクスは歩き出す。


「あ、あの。あなたは…えっと、どこへ?」


 セクスは中央の広場まで女の子を連れて行くと、手を放して女の子の後ろに回って肩に手を置いた。


「お前、名前は?」


「メ、メメイ…です」


「そうか。 おい!! お前らよく聞け!!」


 セクスは広場全体に響くように叫んで闘士たちの注目を集めると、今度はメメイのぼろ布の様な服に手を突っ込んで全身を弄り始めた。


「きゃ、きゃああっ///」


「今からこのメメイは俺の専用にする!! 今後コイツに手を出す奴は、俺がその場

 でぶっ殺す!! いいな!?」


「…!!」


 セクスの突然の行動に広場がざわつく。最初は戸惑っていた女の子も何かを察したのか、抵抗することもなく成すがままになっていった。


「ん…あっ…んんっ…///」


「お、何だ? その気になってきたのか? グヘへ、では場所を変えようではない

 か」


 セクスは下卑た笑みを浮かべながら、メメイをひょいと抱きかかえると、そそくさと自分の控室に消えて行った。

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