第4話 生贄になることを望んだ娘



 シャルが住んでいた村、リカーサ村は平和な小さな村だった。

 ただ、「百年に一度のしきたり」が近付くと、村の若い娘とその家族たちに昏い影が落ちた。


 誰を生贄に差し出すのか?


 過去を振り返ると村長と娘を持つ父親たちの話し合い、ときには籤引くじびきにさえ頼って決めていた。 百年に一度なので経験者が一人もおらず、毎回この話し合いは荒れに荒れた。


 しかし今回、誰も予想していなかった事が起きた。

 ルーミー家の一人娘、シャルカラット・ルーミーが手を挙げたのである。

 当然、シャルの両親は猛反対した。


 何故、自ら生命いのちを捨てようとするのか?

 そんな名誉などいらない。

 生贄に選ばれない可能性に賭けるべきだ。


 シャルは頑なに自分の意志を曲げなかった。ずっと大人しく、人の言いなりだったシャルが何故これほど拘泥するのか、両親は理解に苦しんだ。

  シャル自身の強い希望。 他の娘の親達を主とした「それなら……」という論調。 シャルの両親の反対など簡単に掻き消されてしまった。


 かくして、シャルは生贄に選ばれた。 シャルは後悔など微塵も感じていなかった。



 このまま生きている方が後悔し、ルーミー家の名誉も地に堕ちると信じていたから。

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