騎士団長

第8話 ラッキーだったみたいだね

「いきなり成功するとは思えないけれど、とりあえず行動してみようか」


 というわけで、目的地を目指して歩き始める。


 目的地はその城下町で一番大きな建物……というよりお城そのものなので、すぐに見つかった。


 王宮……町の名前がオリヴィエなのだから、オリヴィエの城、だろう。


 そのお城の門の前に立つ。

 そして門番らしき兵士にレイは話しかけた。


「こんにちは」

「うん?」兵士は突然の来訪者に、「どうかしたかい? 迷子かな?」

「そ、そんなに子供に見えるかな……」レイは小さくてかわいいので、子供に見られてもある程度仕方がない。「僕はレイっていうんだけど……ちょっとこの国に来たばかりでね。お城の中が見たいって思って」

「このお城を? そりゃ許可を得れば入れるけれど……子供が見て面白いものはないよ?」


 どうしても子供扱いされるレイだった。ちょっと悔しそうなのがかわいい。


「……グレイブって人がいるって聞いてきた」

「ああ……キミ、グレイブさんのファン?」

「……」一瞬だけレイは悪巧みの笑顔になって、「まぁ、そういうことかな」

「そうかそうか」兵士は嬉しそうにレイの肩を叩いて、「あの人カッコいいもんなぁ……会いたいって気持ちはよくわかる」

「……この国で一番強いって聞いたけど」

「そうだろうな。なんたってあの人は騎士団長……オリヴィエの騎士団は全体的にレベルが高いと言われているが、その中でも最強の男なんだ。誰相手でも優しくて慈悲深くて……この国みんなが憧れてる」

「へぇ……」完全に悪いことを考えているレイだった。ひめにはわかる。「会ってみたいな……」

「そうかそうか」兵士は完全にレイのことを、グレイブに憧れる少年だと思いこんでいる。「待ってな。今から手続きしてやる。こっちに来なよ」

「ありがとう」


 というわけで、監視等のような場所に招き入れられた。


 そこで数枚の書類に目を通して、適当にサインをする。


「なんで僕は、この世界の文字が読めるんだろうね」


 なんてことをレイはつぶやいていたが……まぁご都合主義としか言いようがない。


「さてと……」兵士は制作した書類にハンコを押して、「今の時間なら……グレイブさんは訓練中だろう」

「訓練……どんな訓練をしてるの?」

「グレイブさんは実践形式の訓練を重視している。だから……戦闘訓練だろうな」

「へぇ……それはちょうどよかった」

「ん? ああ、そうだな。グレイブさんの剣技を間近で見られるもんな」レイの言葉は、そういう意味じゃないと思うが。「この国の訓練場は、かなりデカいからなぁ……コロシアムみたいな、実践さながらの戦いが見られるぞ」

「それは楽しそうだね」


 レイのやりたいことが、明確になってきた。 

 とはいえ、それを感じ取っているのはひめだけ。兵士は……グレイブの戦いが見たくて仕方がないらしい。グレイブのファンなのだろう。


「ありがとな」突然兵士はお礼を言って、「こうして来客の案内してるうちは、暇な門番から離れられるんだ。もっと来客が来ればいいのになぁ……」


 門番がこんなのでいいのだろうか。まぁ、他にも門番は多数いるから、1人くらい欠けてもいいのかもしれない。


「さて案内しよう。この城の訓練場に」


 というわけなので、門番さんが訓練場まで案内してくれる。


 お城の道は、とても豪華だった。ホコリ1つなくて、装飾品の一つ一つから高級な雰囲気が漂っている。

 絵画もシャンデリアも、シンプルで洗練されたデザインだった。おそらく名のある芸術家が制作したものなのだろう。


 歩いているうちに、熱気が近づいてきた。


 レイがつぶやく。

 

「……歓声が聞こえる……」

「ああ……グレイブさんの人気にあやかってな……訓練の見学が許されてるんだよ。多くの人が見学に来てる。とはいえ、いつもはこんなに多くないんだが……今日は月に一度のだからな」

「全席訓練?」

「要するに、この国の兵士全員が参加する戦闘訓練だよ。もちろんグレイブさんも参加する。だから、今日は一層人気がある日ってわけだ」

「それは……僕はラッキーだったみたいだね」

「知らないできたのか? じゃあ、本当にラッキーだったな」


 アピールにはもってこいの舞台が揃っているようだった。


 相変わらずレイは、天に愛されている。レイの最大の武器は、運の良さだろう。


「さて着いたぜ」兵士はその部屋の扉を開けて、「熱気に当てられて、のぼせんなよ?」

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