第16話 俺がいない所で好き勝手に喋る女の子たちが恋話をしたり勝手に振られていた話 その一

 これは神様に用事が外に出ている時の話になります。その日、ヒカリ様が偶然遊びに来てて、偶然ルナ様が神様を訪ねに来ていました。お二方、頻繁に神様の所に来ていますが、バッティングした事ないの、割とすごいですね。


 「あっ」

 「あっ」


 目が合って気まずそうにするお二人。ちなみにお二人は知らない仲というわけではありません。なんで気まずそうにしているのか私にはよくわかりませんが。


 「る、ルナ様。お久しぶりです」


 ヒカリ様がまるで借りてきた猫のように委縮しています。


 「や、やぁ。奇遇だね。君も遊びに来たのかい」


 神様には色々と言い訳なさっていますが、ルナ様、やっぱり遊びに来ていらっしゃるんですね。はは、と愛想笑いを浮かべていらっしゃいます。


 「お、おい君。見ていないで助け船を出してくれてもいいじゃないか」


 面白そうなので見ていたのですが、ルナ様からそうこそっと声を掛けられてしまいました。と、申されましても神様がいらっしゃらないので、私がもてなすぐらいしか出来ませんが。


 「あ、センパイいないんすね。じゃあ私、帰りますので………」

 「ちょっと待ちなよ、ヒカリ。この前の事について僕も話を聞きたいと思っていたんだ」


 この前、とは神様がヒカリ様を助けに行った時の事でしょうか。ひぃ!?と思わず声を上げていらっしゃいますが、ルナ様、そんなに怖い方ではありませんよ?むしろ小さくてお可愛い………。


 「ん?リリー、君、今なにか不遜な事を考えていなかったかい?」


 とんでもございません。私は神様みたいに失礼が服を着ているような方ではありませんので、気のせいです。


 「………君はあいつがいなくても毒舌なんだなぁ」


 恐縮です。


 「褒めてはいないんだけどね。さっ、ヒカリ、行くよ」

 「強制ですかぁ!?ルナ様、ご勘弁をー!」


 何やら今日は、いえ、今日も騒がしい事になりそうですね。神様が隠していた秘蔵のお菓子でも出す事に致しましょうか。




 「もぐもぐもぐ。そうか、あいつが世界を救ってくれたんだね」


 ルナ様のお世話をしながらヒカリ様のお話を聞いています。お菓子が口元からぽろぽろ零れるのをささっと回収させて頂いています。


 「か、神業っす。下に落ちる前に消えてなくなってるっす………」


 神だけにってか!という何処ぞの平凡面の神様が言っているような気がします。面白くないですね(一刀両断)。


 「全く。あいつはいつもお節介ばかり焼いて、仕方のない奴だな」


 と、憎まれ口を言いつつルナ様は嬉しそうに顔を綻ばせています。ああ、そんな顔をなさるからお菓子の食べかすが………。


 「………ルナ様。こう見るとただの幼女なんすけどねぇ」

 「幼女って言うな。いい加減にしないと僕も怒るからな」


 そう言ってぷんぷんと怒ってらっしゃいます。申し訳ないのですが、普通に可愛いだけですね。


 「そう言えば聞いてみたかったのですが、ルナ様と神様はどういった関係なのでしょうか」


 せっかくのこの機会に不思議に思っていた事を聞きます。接点があまりわからないお二人でしたので。


 「どういった関係………と言われてもすぐに説明できなくて困るなぁ」


 うむむむ、と唸るルナ様。そういう所も幼女っぽいのですが、簡単に説明できない事なのでしょうか。


 「ルナ様とセンパイは色々と複雑っすからねぇ」


 訳知り顔のヒカリ様。どうやら何かお詳しい様子。別にいいのですが、ヒカリ様の方が詳しいとなんか嫌ですね。


 「リリーさん、私に対してなんか失礼な事考えてるっすよね」

 「そうですね」

 「否定しない!?」


 ガーン!とショックを受けるヒカリ様。そうこうしている内にようやくルナ様の考えがまとまったのか、口を開きました。


 「僕とあいつは………運命に繋がれた関係………」


 ………………ほぅ。これはこれは。


 「………はっ!?」


 つい出てしまった言葉とは本音であると申します。つまりこれはルナ様の神様に対する告白と言ってもいいのでは?

 なんとなくわかっていた事ではありますが、いざ言葉で聞くとこっちも照れてしまいますね。


 「ち、違う!?リリーが考えているような事ではないからな!?」

 「別に否定されるような事ではないのでは?ルナ様が神様に好意を抱いているという事は見ていてわかりますから」

 「そうなの!?」


 まさかあれで隠しているつもりだったのでしょうか。ヒカリ様もわかっていらっしゃいますよね?


 「ここで私に振るんすか………まぁそうっすね。割とばればれですね」

 「そうなの!?」


 驚き過ぎて同じ言葉を繰り返してらっしゃいますね。


 「ううう。今度から僕はどんな顔をしてあいつと会えばいいんだ………」


 私の見立てではライクである事は気づいていらっしゃいますが、それ以上かはわかっていないと思いますが。それにしても他人のコイバナは面白いですね。


 「ぼ、僕の事はいい!それより、ヒカリの方こそどうなんだい!?」

 「えぇ!?私っすか!?」


 なんだか面白い展開になってきましたよ。ヒカリ様も神様とは浅からぬ関係である様子でしたから、そこの所はどうなんでしょうか。


 「リリーさん!?なんかすごくぐいぐいきますね!?普段のクールな貴方は何処にいったんですかっ」


 クールにホットなのです。いいから答えてください。


 「この流れ、答えないと帰してくれない流れっすよね………えーと、センパイの事は………その、す、好きですよ?ふつーに!ふつーにです!」


 そんな風に強調されると逆に怪しくなるのですが?


 「ふつーと言ったらふつーっす!それよりも!リリーさんこそどうなんすか!?本当はリリーさんも好きなんじゃないっすか!?」


 恋人としてって事ですか?


 「………こ、恋人としてっす」


 自分で言って照れてらっしゃいます。ヒカリ様も可愛らしい方ですね。なんであんな神様がもてているんでしょうか。本当に不思議です。


 「リリー、とぼけていないで僕も知りたいな。答えてくれないかい」


 まぁ私にも来る流れはだと思いましたが、答えなんて決まってます。


 「天地がひっくり返っても好きになる事はないですね。あんなにぐうたらで覇気がない人は好みではないです」


 はっきりと言い切るとヒカリ様が神様のフォローをしてきました。


 「で、でも、私の世界を助けてくれたセンパイはかっこよかったっすよ?覇気がないは言い過ぎなんじゃないすかね」

 「普段から休みてー寝ててーずっとごろごろしててーとか言ってる神様見てると、あれは夢か幻なんかじゃないかと思いますね」


 それかただの気まぐれでしょう。ヒカリ様に助けてって言われて調子に乗っただけですよ。


 「ふーん。じゃあリリーはあいつの事、好きじゃないんだな」

 「男としては、ですよ。神様自体は………まぁ上司としては失格だと思いますけど、嫌いではないです」


 傲慢な神様ばかりに仕えていた身としては、意外な程にまともな神様です。そこは評価できる所ですね。


 「ぐうたらか。僕ももうちょっとあいつにはしゃきっとして欲しいんだけど、昔っからそうだしなぁ」


 ルナ様が苦笑しています。やっぱり神様とルナ様は付き合いが長いのでしょうか。そこの所も聞いてみたいですね。

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