第26話 模擬刀(物理)

「けどしばらくロゼ搭乗訓練はなさそうだから、残念よねえ」

「え、どうして?」

「どうしてもなにも、10機しかないロゼのうち、5機があんなに派手に壊れたんだもの。修理に相当時間かかるでしょ」


 シーの言葉に、私は固まった。


「も、ももも、もしかして私のせい……?」

『そらあんさんやろうなぁ。えらい派手にぶった斬っていたし?』

「あ、あれはホロが『ちゃんと無力化せえや』いったからじゃない!」

『せや、無力化は戦闘において重要やで?ただまあどっかの誰かさんは訓練用の模擬刀でも力づくでぶった斬ってたけどなぁ。普通は軽く当てれば被弾部位が機能停止するようにできてるんやけど』

「は、初めて聞いたわよそんなこと!」

『普通はしっとるもんなんやけどなぁ……』


 ホロは「やれやれ」といった感じで光の粒子を撒き散らす。


(『まぁワイもお嬢ちゃんにちゃんと伝えてなかったし、今回はなんとかしたるわ』)

(なんとかって、どうすんのよ)

(『——こうするんや』)


 私の右腕が意識とは別で、ホロに操られて伸び、ディスプレイが立ち上がる。

 そこから手慣れた手つきで通信機能を呼び出し、ある数字を叩いていく。

 最後に、承認コードをAAA特権をもつホロとすれば、繋がった。


『あ、ガンツ司令官はん?おひさー。ワイやワイ。そ、ホロや。ちょいと相談があるんだけど、今ええかな?』


 誰もがギョッとした顔ををする。ディスプレイ越しに映るのは確かにガンツ司令だ。

 突然の連絡にガンツ司令は苦い顔をよこした。


『——どうしてこのコードを知っている』

『そないなこと今はええやんか。あんさんとワイの仲やろ?——そ・れ・よ・りも、や。チーとばかしロゼを融通してほしいんやけど。あ、個人にやないで?学校にや」

『断る』

『そないなこと言わんといてや。20機程度でええんよ』

『なおさら無理に決まっているだろう。そもそもフェルンディオ全体で200機しかないのだぞ。さらに先の戦闘で大破が35機、中破がその倍以上。その上、現存戦力をさらに削るようなことなど』

『——第八世代のロゼ、中央に掛け合ってもええで?』

『なんだと……?』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る