食いしん坊バンザイ!
7月20日にお目覚めして、リハビリやらなんやらに1ヶ月。
そこからさらに1ヶ月の間はとにかく家族サービスに尽くしましたね。実家に帰り、遊園地や動物園に行き、みのりんのお父さん、お母さんとも顔を合わせることが出来まして。
あいだあいだで、すっぽかした形になった、関係各所へお詫びの挨拶に行ったり、家を購入する相談に行ったり、ちょっとずつトレーニングも始められる段階にもようやくなってきた。
車の運転も始めましたですしね。泣きながら警察署に行ったら、色々と親切にして下さいまして。おかげさまでわりとすぐに免許証は復活しましたわ。
気付けば9月も後半。ビクトリーズの8年連続の最下位が確定したという情報を得ましたので、仕方なく元気づけに目覚めてから初めて、ビクトリーズスタジアムへと足を運んだのだった。
あえてクラブハウスには行かずに、試合開始2時間前くらいにそそくさとスタジアムに入って、ほんじゃ試合前のミーティングやるでー!というタイミングで、集まったみんなの前に現れたのだった。
阿久津監督や他の首脳陣だったり、球団関係者にも許可を頂きまして、サプライズ登場をやらせてもらった。
みんなして目を丸くしながら、うおっ!!っと驚いた後に、何故か笑い声が上がった。
「どうも!去年のドラフト10位で入団しました新井時人です!36歳になりました!よろしくお願いします!」
と、挨拶すると、笑う奴が半分、泣く奴が半分という感じでしたね。
俺とはじめましての若い選手達だったり、この5年の間に入ってきた選手は、噂通りの人だと笑ってくれたのだけれど………。
センターを守る俺の相棒は…………。
「新井さん…………ほんとうに………ほんどうに良かっだです………。ずっと……心配して……もうダメかなって…………何度も………」
「俺の心配じゃなくて、自分の成績を心配せい!」
俺がスパーンと言い放つと、周りの若い選手達が手を叩きながら笑った。
「俺は絶対に帰って来るって思ってましたよ。また一緒にキャンプしましょうねって約束しましたし……」
「おう、桃ちゃん!この前は電話くれてありがとな」
「ええ、のぞみも新井さんに会いたがってましたよ。今度、みのりんさん連れて遊びに来て下さい。子供達も一緒に」
「面白そうだな」
すると柴ちゃんの後ろでも、同じくらいの熱量で泣いているやつがもう1人。ちゃっかりキャプテンマークを着けたユニフォームの袖で涙を拭っていたのは並木君であった。
「俺も……ほんっと嬉しいですよ。……新井さんにはたくさんお世話になりましたし………ぐすっ……」
柴ちゃんや桃ちゃんと違って、並木君にそう言われると胸に来るものがありますわね。彼のお父さんの件も思い出してしまって………。
「やあ、イーサン!今日は勝ちますから、ゆっくりと見学してて下さいよ」
「おう、ノッチ。しっかりリードしろよ」
俺は戦友である北野君とガッチリ握手を交わした。
「あれ?北野は随分平気そうだね。君も泣くと思っていたのに」
桃ちゃんが不思議そうな顔をした。
「ええ。新井さんとはもう何回もゲームで話しながら一緒にやりましたから。その時はちょっと泣いちゃいましたけど」
「ああ、なるほどね」
「ウエーイ、あらいさーん!!」
「おおっ!連城君!こっちからブルペンまで行こうと思っていたのに。君が先発だから見に来たんだぞ」
そう言ってやると、彼は5年間でだいぶ白く歯を光らせながら豪快に笑った。
「何言ってんすか!たまたまでしょ!?でも、せっかく新井さんが来てくれたんですから、今日は完投しますよ!」
「おいおい無理すんなよ。君はいまだに立ち上がり悪いんだから、コントロールしっかりな」
「あはは!言われちまいましたなあ」
連城君に続いて、明日先発の碧山君やすっかり先発ローテーションに定着した千林君や小野里君とも再開出来た。
5年ぶりとはいえ、特に仲の連中はまだ結構残っている。
柴ちゃん、桃ちゃん、並木君、ノッチ、緑川君、露摩野君。阿久津監督、2軍で会った鶴石さん。連城君、碧山君、千林君、小野里君、中山諒に、オリンピック帰りのキッシーと会うことが出来た。
逆にチームから居なくなってしまったのは、引退した奥田さんと広元さん。
今は東北レッドイーグルスにいる高田さん、横浜にいる守谷ちゃん。そしてチームの構想外になってしまっていた、杉井君と川田ちゃんなどは、今は野球界とは違う職種に着いているらしい。
その中でも、もう38歳になった高田さんがまだ現役なのはなんだか嬉しいですなあ。
「それじゃみんな頑張ってな!俺1回帰って家族連れてくるから、コールド負けとかしないように」
俺はそう言い残して、スタジアムを後にし、お昼寝していた子供達が目を覚ますまでみのりんの執筆のお手伝いをし、試合が始まった頃、双子ちゃん達を連れてまたイカルガでビクトリーズスタジアムまでやって来た。
「新井さーん!新井さーん!」
と、元気な声。
タイトなジーンズで踝を出して、ピンク色のスニーカー。双子ちゃん達と同じくらいの男の子の手を引いてやって来たのは、宮森ちゃん………もとい、桃白のぞみである。ビクトリーズの元広報主任。
今は専業主婦である。
「新井さん、みのりさん!!あのっ、えっと!退院おめでとうございます!!」
こう特殊に久しぶりともなると、彼女もまずどうなんと言ったらいいかと、そんな様子だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます