第16話 依頼と課題
サモンズ殺害阻止計画を完遂し、僕らはまたいつもの日常に戻り、今日も朝からダンジョンに来ていた。
今日来たのは9階層。
9階層もこれまでと同様、皮をドロップする獣系の魔物がいる。
9階層を歩いていると、早速この階層の魔物とエンカウントした。
その魔物は今までの魔物と比べ一回り大きい。
その名はコングート。
コングートは格闘術を使うゴリラ型モンスターで、モンキートの成長した姿とも言われ、かなりのパワーを持つ魔物である。
「久しぶりのダンジョン探索でアストレアも戦いたいと思うだろうが、まず僕からやらせて欲しいな。」
「嫌です。私も戦いたいです。」
「ん~そうか。今日は特別にアップルパイを一つ持って来ていたんだけど、僕が食べようかな。」
僕はそう言いながら、鞄の中から持ってきたアップルパイをアストレアに見せる。
「し、仕方がないですね。今回だけはミドル様に譲りましょう。」
アップルパイをチラつかせると、アストレアはすぐに譲ってくれた。
僕は持って来ていたアップルパイをアストレアに渡すとすぐに飛びついて、頬一杯に頬張り出した。
そのやり取りの後、僕はコングートと向き合う。
パワー系ということで、カトラスの強度を試しておくことにした。
僕は、コングートと向き合い戦闘の態勢を整える。
コングートは大きな咆哮と共に両手で胸を交互に叩く。
その後、僕目がけて一直線に両手を前に着き四足走行で走ってくる。
両手を組み合わせ、高々と振りかぶるとその両手を真っ直ぐ下ろしてくる。
僕はカトラスで受け止める。
ゴーーン
という鈍い音がダンジョン内を駆け巡るが、僕には傷一つ付かない。
逆に攻撃をしたコングートの方が痛がっている。
僕はカトラスの強度に感心しながらも、気を抜くことはなくカトラスを短剣へ変化させ、コングートの首を切り落とす。
「ミドル様は本当に強くなられましたね。」
アップルパイを食べながら、僕とコングートとの攻防を後ろから見ていたアストレアが拍手をしながら言ってくる。
「それに、そのカトラスという魔道具も本当に素晴らしいですね。他にも、ウィングやグレイルなどもこの世界では脅威となりかねません。そんなものを売っているドーラ様のあのお店は一体何なのでしょうか?」
「そうだな。いつかドーラさんに聞いてみないとな。あんな店が流行ったら一大事だ。」
「そうですね。」
「そんなことよりも、今はダンジョン攻略だ!今からはアストレアに戦ってもらうからな!油断せず、気を引き締めて行けよ。」
「はい!」
それからアストレアは数えきれないほどのコングートを危なげなく倒していった。
「ミドル様、わたくしのレベルが10になり、また新しいスキルを覚えました。」
「おお、またか。今度はどんなものを覚えたんだ?」
「透過です。」
「とうか?」
「物を通り抜けたり周りに溶け込んだりだと思います。使ってみないといまいち分かりませんが。」
「それは便利だな。それに、これでもうアストレアもフードの中に隠れなくて済むな。」
「それとこれとは話は別です!」
僕がそう言うと、アストレアは何故か少しむくれた顔をした。
そんな話をしていると、ダンジョンの奥の方から他のテイマーが歩いて来る音がしたが、僕たちの前をこちらを見向きもせずに素通りしていった。
「今回の透過はわたくしだけではなく他の方も透過できるようです。」
テイマーたちが去って行ってからアストレアがそう言った。
「アストレアが今透過を使ったから、気づかれなかったのか。戦闘にも役立ちそうだね。」
「では、今から試してみますか?」
疲れている僕に対してまだ戦い足りませんと言わんばかりに提案してくる。
「いや、今日はもう疲れたし、遅いし次回にしよう。」
「そうですか……。」
僕が断ると、アストレアは少し悲しげな顔をしたがそんなことは気にせずに、僕はダンジョンを出て冒険ギルドに向かった。
冒険ギルドに到着し、いつものように今回のドロップ品を提出すると、いつもの受付のお姉さんが話しかけてきた。
「ミドルさん、今回のドロップ品提出で貢献度が一定に達したと連絡がありましたので、次からは依頼を受けられるようになりました。」
「依頼ですか。ちなみに、それはどんなもので?」
僕の知らない制度が出てきたので素直に聞いてみる。
「依頼には主に二種類ありまして、一つ目は『護衛系』です。依頼者の目的地まで安全に届けるとその距離などに応じて報酬がもらえます。二つ目は『討伐系』です。こちらは、魔物を討伐すると報酬がもらえます。依頼は、後ろの掲示板に貼ってある紙をこちらに持って来ていただくと受けることが出来ます。貢献度もダンジョンのドロップ品提出よりも高いとされていますのでお勧めしますよ。」
「なるほど、分かりました。明日からは考えてみます。」
受付のお姉さんは懇切丁寧に依頼について終始笑顔で教えてくれた。
僕はそうして受付を離れようとすると、呼び止められた。
「あっ、それと今回提出していただいたのは9階層のコングートの皮でしたよね?」
「はい、そうですけど。」
「でしたら、次の10階層に行かれる際は少なくとももう一人お仲間を連れて行くことをお勧めしますよ。」
「仲間ですか。どうしてですか?」
僕はこのままアストレアと二人でダンジョンなどを攻略していこうかと思っていたので、「仲間」という言葉を考えることが無かったので少し驚いた。
「ダンジョンの10階層ごとにはボスと呼ばれる魔物が存在しています。ボスは今までの魔物とはレベルが全く異なり、一人で討伐するのは困難と言われておりますので伝えさせていただきました。討伐の貢献度はどちらにも等しく振り分けられるのでご安心ください。」
「そうなんですね。考えておきます。」
「はい、お気をつけておかえりください。」
「ありがとうございました。」
僕はそうしてお姉さんに別れを告げ冒険ギルドを後にした。
「仲間ですって。どうするのですか?」
隠れていたアストレアがローブのフードの中から話しかけてく来る。
どうしてもこのポジションが良いらしい。
「そうだな~。アストレアがいるから大丈夫だとは思うけど、一人で討伐したとなるとそれはそれで目立つだろうしな~。」
今は極力目立たずに過ごしておきたいので、二人で討伐することが好ましいがこんな僕と仲間になってくれる人は居るだろうか。
新しい課題が生まれてしまった。
「明日から、仲間探すか~?」
「あてはあるのですか?」
アストレアは痛いところをついてきた。
これまで友達というものはできたことがない。
あてなどあるはずないのだ。
でないと、裏切られたりなどしないのだ。
僕はアストレアの疑問を無視して、黙って家まで歩いた。
「あ~もう、無視しないで下さいよ!」
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