第15話 幻影爆発

「アストレア、うまくいったのか?」

「はい、ミドル様。」

「遅すぎて、死ぬかと思ったぞ。」

「安心してください。私が必ずミドル様をお守り致しますので。」


アストレアは僕に向かって笑顔でそう言った。


その後ろ、さっきまで爆発の煙が空高くまで上がっていたが、それは一切消えてなくなって、空は綺麗に澄み渡っていたのだ。



僕らの計画は祭りの始まる前から始まっていた。


まず、ダンジョンの6階層に行った理由から話そう。


6階層に行った理由。

それは、6階層のモンスター、フォクスィーの幻術をアストレアにマスターしてもらうためだ。


ダンジョンの6階層でアストレアにはフォクスィーのあらゆる幻術に引っ掛かってもらいその技を盗み、覚えてもらった。

こんなことが出来るのもSランクであるパートナー、アストレア様様である。


そして、祭り当日、アストレアには祭りに来ている全員に集団幻術を掛けてもらった。


僕も例外ではなく、ハケスやレノンにもだ。


彼らはウィングを買っていたため、空から見るつもりだと予想しその通り、祭りが始まる前からずっとウィングで空から見ていたため見つけやすかった。


そして、僕らが式典を見ている間にアストレアの幻術によって町のテイマーたちは念のため遠くにおびき寄せて置いた。


その結果、あの会場には僕とサモンズと空から見るハケスとレノンのみだったという訳だ。


そして、あとはケーキに仕組まれていたグレイルをアストレアが空にぶん投げてジ・エンド。


僕は身を隠すため遠くに逃げたという訳だ。


町は爆破されてないし、死者も誰一人としていない。


何でこんな回りくどいことをしたかって?

別にグレイルだけを盗んで終わりで良かったじゃないかって?


それはまず、グレイルを消費させたかったというのが一つ。

あんなものを盗んできたところで、いつ何処で爆発させようと怪我人が出ないとは言いきれない。だから、人を遠くに移動させる都合の良いこの時に消費させたのだ。


もう一つは、自分の計画が成功したと思わせ、失敗したどん底に突き落としたかったからだ。1度は絶望をアイツらにも味わってもらおうとね。


「幻術はもう解除しておきますね。」

「ああ。アストレア、ほんとにありがとう。」

「ミドル様のためならなんだってします。それに、アップルパイですしね。」


僕はこの計画を成功させた暁には母さん特製アップルパイを思う存分食べさせてやると約束したのだ。


こんなにも大きな力がアップルパイで動くとは、なんと単純なのだろう。


僕は心の中でアストレアを笑った。


「あー、今なんか失礼なこと考えましたね?」

「そんなことないよ。」

「嘘です!わたくしには分かるのです!」

「そんなこと言わず、さっさと帰るぞ。」

「もう!帰ったら問いただしますからね!」


そう言って、僕はアストレアに連れられ家に帰った。



これで僕らのサモンズ殺害阻止計画は閉幕したのだ。



────────────






ドォーーーーーン




大きな爆発音がハケスとレノンの耳に響き渡る。


「遂にやったな、ハケス。」

「ああ、レノン。」

「これでうるさい、あいつとはおさらばよ。」

「これでやっと何の嫉妬もストレスも感じずに生きられるな。」



ハケスとレノンは目の前に広がる煙を見ながら、計画の成功の喜びを空で分かち合った。


熱く二人で握手をし、抱擁を交わした。


「よっし……。は?」

「ん?どうし…た…。」


そんな中、この目を疑う光景が見える。


爆発で消し飛んだはずのこの町一帯が、何一つ傷なく残っていたからだ。


「どうしてだ?!確かにこの町は吹き飛んだはず。」

「グレイルはちゃんと発動したんだよな?」

「させたさ!なのにどうして。」


そう、さっきまでの目の前の光景とのギャップで動揺しているときにレノンのパートナー、スクアラルが鳴き始めた。


「キィー、キィー!」


何かを伝えようとしている。

鳴くだけでは伝えられないと思ったのか、スクアラルはある方向に飛び始めた。



2人はしばらくスクアラルについて行っていると、その方向の先、遠くに広がる場所に人の影が一つ、二つあるのを見つける。


僕らは近づくにつれその片方に見覚えがあるような気がした。


が、確信を得る前にその影は突然姿を消した。


スクアラルも姿を見失ったのか移動を辞め、俺達も飛行をやめる。


「おい、ハケス。今の・・・・」

「だよな、レノン。でも、あり得るわけない。あいつが生きてるなんて。」

「でも、万が一がある。念のため、準備しておくぞ。」

「そうだな。」


2人の思ったことは同じだった。


ハケスとレノンはそう言ってある場所に向かって飛んで行った。


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