異世界ファンタジーとは要するに、作り話である。
嘘であり、
現実味がなく、
誰も見たことがない根拠のない話である。
そういう風に書いても、誰にも文句を言われない。
「貴方だけの話だから」という生ぬるい聖域に守られた分野である。
――そういう、甘えを、粉砕されるような圧倒的な筆力があります。
話の分類としては、決して誰しもに読みやすい話というわけではないと思います。
難しい領域のことも書いているので、欠伸をしながらは読めません。
こちらも読み手として非常に集中しなければ話を明確に捉えることは出来ないと思います。
ただ、説明文の羅列に迷った時は、この話の登場キャラのセリフを読んで下さい。
それが、読み進める上の手がかりになります。
この話の登場人物には、何となく生きている人間がおらず、何となく生きているように描かれている人間でさえ、心に何か一つ目的を秘めているのです。
そんな彼ら一人一人に作者が魂を吹き込んでセリフを語らせているのが伝わってきます。
この話は取り扱ってるテーマが壮大であり、たかだか100年程度しか生きられない人間が、思想や魂を受け継ぎながら、寿命を越えた生命線を描いていく話です。
莫大な時間を惜しげもなく作中で使い、
しかしその費やした時間の全てを、完全に作者が頭の中で鮮明に映像で、思い描けている印象を受けます。
はっきりとしたビジョンに基づいて、それを文字に起こしているような描写やセリフが積み重なる為、「現実ではないが、確かに語り継がれてきた伝承」、聖書で語られる物語のように明確に浮かび上がって来ます。
文章を見て、光や、色や、音さえイメージ出来る。
その言葉を放った時の登場人物の表情、声の調子すら、はっきりと感じられます。
そういうことが可能な文章は、
作り物の世界を、作り物のままにさせておきません。
作者の思い描く、その人だけの世界観を、画面で見る映像のように捉えさせてくれます。
一体この長編が、最新話でどのような展開になっているのか、想像も付きません。
ただ決して物語の主軸がぶれているなどということは無いでしょう。
第一話から貫き通される一貫した情熱が、それを信じさせてくれます。
筆一本で新しい世界を生み出せる、物書きの真価、
これほど自信と覇気に満ち溢れた文章を書ける人は、本当に一握りの人です。
読み飛ばさず、じっくり腰を据えて時間をかけて読んで欲しい。