第41話 帝国には間欠泉があるそうですよ
王城から戻ってきたのは夕方18時過ぎ。さっき7回目の鐘が聞こえたからね。
そうそう、この世界には時間の概念があまりない。
基本的には王城や教会なんかが、同じ日時計もどきを見て日に8回鐘を鳴らすだけ。
一日の始まりの鐘がおよそ6時、そこから大体2時間おきに鐘が鳴ってるから、最後の鐘は20時くらいかな。
基本的には6時に起きて20時には就寝っていうのが普通の人達の生活サイクルみたいだ。
まあ、遅くまで飲んでる人はいるけど、それは時間と関係ないしね。
それに冒険者は一日のほとんどを鐘の聞こえない場所にいるから、時間なんて関係ないブラック職業だし。
転移魔法で商工ギルドのショウコウさんの執務室へ転移。ショウコウさんを置いて、屋敷には歩いて戻る。
「「「お帰りなさいませ」」」
セバスさん以下5人ほどのお出迎え。いつも思うんだけど、何故俺が帰ってくるって分かるんだよ。
俺GPSでも埋め込まれてる?
聞くのが怖いから聞かないけどね。
風呂か食事か聞かれて風呂を選択。久しぶりにゆっくりと浸かる。
こうして優雅に浴槽に使っているんだけど、こんなこと出来るのはお貴族様くらいなんだって。
だって浴槽に水を溜めて沸かさなきゃいけない。もちろん何往復もして井戸から汲んだ水を浴槽に入れ、庭で焼いた石を入れて沸かすんだって。
この作業は重労働である上に、適温を保つには結構な経験が必要みたいで、お貴族様の間では風呂職人として重宝がられているみたいだ。
我が家にもひとり風呂職人がいるよ。でも結構齢をくってるから、そろそろ引退させてあげたい。
そこで考えた。
「よし、温泉を掘り当てよう」
我が家の風呂場からは広い庭が見える。石を焼いたり、水を置いておくための空間だな。
ここに源泉が引ければいいんだけど。
簡単に考えているが、そもそもこの世界に温泉なんてものがあるのかどうか疑わしい。
それにあったとしても温泉って結構深くまで掘らなきゃいけないし、出るかどうかもかなり確率が悪いらしい。
「一旦、戻ってネットで調べるか」
そうと決まれば、風呂を出てとっとと夕食をすます。
早々に書斎に行き、地下ダンジョンのセーブポイントから、向こうの世界に戻った。
「土曜日のAM7時前か。ひと眠りするかな。」
ゲームモードでパーティーメンバーが消沈して解散になったのが土曜日のAM6時過ぎ。
そこから少しして現実モードに突入したっけ。
アッチとこちらでは体力とかも全く別々。当たり前っちゃ当たり前なんだけど、意識は同じだからなんとなく気持ち悪い。
とにかく徹夜でゲームモードを終えた後だから眠いんだよ。
ピピッ ピピッ ピピッ ピピッ ピピッ ピピッ ピ...
目覚ましの音で目を覚ます。
ただいまの時刻は正午を少し回ったところ。
欲しかったものを買いに駅前に向かう。
家電量販店の大型店舗もあるし、大型スーパーも何件かある。
この辺りだけで大抵揃うので、買い物は駅周辺で済ましていることが多い。
2時間程ぶらついた後、自宅に戻る。
「さてっと、温泉掘りを調べるか」
パソコンを開いてブラウザを立ち上げてネット検索してみる。
最近のネットってすごいね。AIっていうのかな、知りたいことを適当に入れたら関連することまで含めて親切に教えてくれるんだ。
「うーーーん、個人で掘るのは無理ってか。法律もあるし1000メートルも掘らなきゃいけないってなったら、普通は無理だよな。
でも俺が掘るのはアッチの世界だからな。そうだ!ネット掲示板で、アッチに温泉があるのか、まず調べてみよう。
えーーっと、『アグニストゥースオンライン 温泉』で検索っと。
おー!出て来たね。どうやらビスマス帝国でのイベントで『間欠泉での戦い』っていうのがあるな。
間欠泉があるってことは温泉もあるってことだし。帝国なら近いし、それにアダム王子の件で行くことになるかもな」
よし、温泉はその時に考えよう。
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