第39話 王子とダンジョンで…

「そうじゃな。ビスマスではミスリルもアダマンタイトも採れると聞くのお。


ダイヤか何か…いや中途半端な大きさじゃ駄目じゃな。


ダイヤならば、ソフトボールくらいの原石は必要じゃ。


いくらなんでも、無理難題じゃな」


自分で言っといてため息をつく、王様。


「そうです陛下。いくらなんでもダイヤには大きさの限界というものがあります。


物理的に不可能でしょう」


うん?


「えっ、そんなもんで良いのですか?


いっぱいありますけど」


「「ええーーーっ!!!」」


俺は収納からソフトボール大の原石を3つほど取り出して、ふたりの前に置く。


「「ええーーーっ!!!」」


そんな驚くもんなんだ。


「こ、これは?」


「ダイヤモンドダンジョンの地下32階層にありました。


あそこは火山地帯になってまして、降り注ぐ溶岩の中にこれが埋まってるんですよね」


「「ええーーーっ!!!」」


「そ、そうすると、これがもっとあるみたいな言い方だが…」


「ありますよ、ほら」


机の上に乗るだけのダイヤ原石を取り出す。


その中には、バレーボール大の物も含まれている。


「「ええーーーっ!!!」」


「これならいくら帝国皇帝と言えど度肝を抜かれるに違い無いじゃろて。


ハヤトよ、これを取りにアダムを連れて行ってくれぬか」


「熱いですよ。暑いじゃなくて、溶けそうなほど熱いですけど、それでも良ければ」


「アダムには王家秘蔵の耐熱のローブを着せよう。それで大丈夫か?」


「はい、行き帰りは転移魔法を使いますので」


「「ええーーーっ!!!」」




ということで、俺はアダム王子を連れてソフトボール大のダイヤ原石を取りに行くことになったのだった。



「全く、ハヤト殿の転移魔法には驚いた。


たしかに王国にも転移門はあるが、あれは古代文明の遺跡より発掘された物だ。


発掘されてから何百人という高名な魔術師が解析を行ったらしいが、未だ解明出来ておらぬ。


それと同等どころか転移門無しでこうして転移出来てしまうなど、聞いたことがない。


実際に体験してみて、その凄さを更に実感したぞ」


アダム王子は理論派で商談以外では口数も少ないって聞いてたのに、この饒舌さだよ。


もしかしてこっちが本性なのかもね。


年齢も俺とさほど変わらなかったはずだ。


もちろん丈一郎の齢じゃないよ。


ハヤトの設定年齢の16歳とだね。


「アダム王子、熱く無いですか?」


「熱くかい?大丈夫だ。このローブがあるからね。


君こそ大丈夫なのかい?」


「ええ、俺は結界を身に纏っていますので。


王子も如何ですか?」


「大丈夫だ。しかし身に纏う結界とはよく考えたものだ。


結界とはオーガロードやドラゴンの魔石をいくつも使って展開するものと聞いているが、ハヤト殿はそんな物も持っているのかい?」


「ええ、持っているかと聞かれるとそれなりの数持ってますけど、この結界には使ってませんよ。


単純に結界魔法ですから」


「そうは言うが、以前市井を視察中に暴漢に襲われてね、その時に護衛の魔術師が3人掛かりでようやくわたしひとりに結界を掛けることが出来たのだよ。


それもわずか数分しか保たなかった。


それほど魔力を使うと言っていたが………


君は既に20分以上維持してるね。


宮廷魔道士の何倍もの魔力を持っている証拠だ」


「はぁー」


まさか転生チートなんて言えないしね。


正確には転生じゃ無いんだけど、これだけこの世界の常識とかけ離れてたら、やっぱりチートなんだよな。


ローブがあるから大丈夫だって言ってるけど、アダム王子の顔は真っ赤になってるし、この汗の量は脱水症状を起こすよ。


黙って、結界を掛けておいてあげようかな。





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