そんなことがあってから数年後。

私は体調に異変を感じていた。ものすごくだるいのだ。そして何度も嘔吐した。

私は体調が悪いのを隠したかった。

前の時のようにケイに負担をかけたくなかったのだ。気分が悪くなると見つからないように二階の隅っこでこっそりと嘔吐した。

しかし私は肝心な事を見落としていた。

この家にはもう一人ワイがいた。奴は我々のことをなぜか詳しく知っている。私の行動も見透かされていた。ワイは吐いている私を見つけると問答無用で箱の中に私を放り込むと、病院への道を進んでいった。

病院につくと、血液検査をされて、超音波検査もされた。しばらくしてから私たちは医者に呼び出された。初めに血液検査の結果と数字の意味を説明される。その中で淡々と言われたのは余命2週間だった。あまりにも急で実感がわかない。衝撃が大きすぎて感情が付いてこない。ケイもそうなんだろうか。彼女であれば言葉の意味を理解した瞬間に大泣きしただろう。人と言う生き物は衝撃が強いと無になるのだろうか。彼女の顔をみると言葉を発さないが、瞳の奥が揺れているのがわかった。

ワイは冷静だった医者の説明を黙々と聞いている。どうやら急性腎不全のステージ４とのことだった。余命はそのステージにある我々の種の平均値だということだ。

とにもかくにもこの２から３日がやまだということで私は入院することとなった。

その夜本当に久しぶりに一人になって考えていた。今までケイと過ごしてきた日々。今彼女は私を心配して泣いていないだろうか。嘔吐した私をみていつものことと思った自分を責めたりしてないだろうか。私は自分のことよりも彼女のことが気がかりでしかたなかった。やがて薬が効いたのだろうか、気が付くと私は寝ていた。

３日後私はケイと再会を果たした。彼女は寝れなかったのだろうか、かなりやつれているものの、私を見るといつものように優しくなでてくれた。結果的にはステージ３と同じ程度の数値に落ち着いたため退院することとなった。

しかし２日に一度の点滴。腎臓を考慮したおいしくない食事という形での闘病生活が始まる。

そしてそれはケイが私を失うことになっても大丈夫だと思えるまでの時間を作るために神によって与えられた時間でもあった。